127日目 橋 ページ1
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「てめぇ…!どういうつもりだ!!」
当然の反応。
「ここにいりゃ死ぬんだぞ。今すぐ逃げろ、姿消せ!!」
「嫌だ。逃げるつもりはない」
「は?」
ノーマンは既に硬さの残るワイシャツに腕を通し、ベストも着終えていた。
外では口を開かなかったが、この作戦の成功を一番に願っていたのはレイだろう。
…こんな時も俯瞰的に捉えている自分は、なんて哀しい人間なんだろうか。
「それより聞いてほしい、時間がない。報告、逃げ道の下見」
ネクタイを整えた後、レイとの会話を一方的に切り上げたノーマン。
『とりあえず聞こ?』
「崖だったよ」
「え?」
「塀の向こう。とても、飛び降りられる高さではなかった」
それが嘘ではないことは、彼のの声色と間が物語っていて。
「………え……崖?」
「うん」
エマが思わず聞き返してもそれは変わることのない事実で。
「シスターは嘘をついていなかったし、鬼は家畜(僕ら)をナメてはいなかった」
警備いないんだ…
「だから塀に沿って端まで行ってみたんだ。塀は二股に分かれていて、丁度60度ずつ」
スケッチブックと鉛筆を取り出して、ノーマンが図を用いながら説明してくれる。
「片側はやはり断崖。二股の塀の内には、まるで対称……そっくり同じ景色が広がっていたよ。
レイのおかげで混乱はしなかった。つまりこういうことだ」
新しいページにされて描かれたのは六角形。
「飼育場(プラント)は塀を挟んで隣同士。6つの区画の内、ここ第3プラントの真西にあるこの区画、恐らくここが本部」
そのまま続きを待った。
「なぜなら周囲は絶壁__だけど、この区画の先にだけ橋があった」
誰かから得たのではなく、ノーマンがその目で見て来た情報。
「“逃げるなら橋(ここ)から”だ」
コンコンとタイムアップを知らせるように響いたノック。
「ノーマン、ママが呼んでるー」
「今行くって伝えて」
ああ…未だに彼がいなくなることが信じられない。
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作者名:水月 | 作成日時:2019年7月13日 23時