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彼女の手を掴み、人差し指で凹んだ穴を輪郭を描くように探す。
ぽこっ、凹んだところで彼女を見つめた。
彼女は本気で焦っていて、これやばいな、と思いながら笑いかける。
「ここに開けんのかぁ」と緩い声を出すと、彼女は揺れた声で「そ、そうだよ!」と髪の毛をくるくる回した。
「なんかアレだな、元々の穴が人工のもので埋まんのも、なんかいいな」
へそから上に手をあげる。彼女は情けない声を出した。
「こういうのを、身体改造って呼ぶんだよ」
「身体改造、へぇ」
行為をピタッとやめ、キスをする。
「これも身体改造?」
もう一度、彼女に口にキスをする。
彼女の口がふにゃ、と形を変える。
「これは違う!ちぎゃう!」
Aは若干本気な声で反論し、微笑んだ。
「今度、ピアス開けよーかな。まずはファーストピアス」
ファーストピアス、というのは、はじめてピアスホールを開けてから穴が安定するまでの間、ずっとつけているピアスのこと、らしい。
そこからどんどん拡張していくらしい。
俺は拡張なんで絶対したくないけど。
痛そうだし。
開けられれば、それでいいし、広くしすぎると民族みたいになるんじゃね?
「ほ、ほんと!?」
「まだわかんないって!そんな期待の目で見られても!」
「今のままでもいいよ!虎杖くんは私の恋人で、サディストでマッドでかっこいいよ」
「俺ってピアスもなんもしてねぇよ?」
「考え方がマッドな奴!」
「そお?」
「それ!否定しないところ好き!」
「俺もAが好きー。はい、ちゅー」
彼女にキスをされたが、別のことで頭がいっぱいだった。
身体改造、とはどんなことだろう。
ピアスも人体改造に入るなら、歯の矯正だって人体改造なのだろうか。
でも、何か違う。
彼女は埋めなくてもいいところをピアスで埋めるのだ。
でも何故彼女は前歯を埋めようとはしないのだろうか。
でも、ああ、わからない。
わからないから彼女は俺にとっての「恋人」なんだ。
「お前、キス下手だよな」
「ひぃ!」
「え、なんで今悲鳴」
「今、あそこの窓から五条先生が!私たちのこと見てて!多分ニヤニヤしてる!」
「んー、別にいいんじゃね?」
彼女に強引にキスをした。
唇の形を変えていく。
いつも彼女の唇は冷たくて、水のように気持ちよくて肌に
馴染んでんでいく。
身体改造。
少し怖いけど、水のように形を変える彼女はやっぱり素敵だ。
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作者名:明日のパリパリ | 作成日時:2022年7月30日 22時