漆黒の禍狗はパパになったようです

とらさんといっしょ!　1 ページ10

二次元=オタクの聖地様、リクエストありがとうございます！
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〜生後11ヵ月〜
敦side

「人類史上最大の謎だ…」

「羅生門の餌にするぞ人虎」

「ほらほら、二人とも治春ちゃんの前だよ？」

「「はい」」

太宰さんに云われ、僕も芥川も引いたが、目の前の光景に目を疑わずにはいられなかった。

もしかしたら、この謎は乱歩さんすら解けないかもしれない。

何しろ、あの芥川が腕に一歳になるかならないか、という位の赤ちゃんを抱き抱えているのだ。

最初見た時は何処から誘拐して来たのかと思ったが、太宰さんが、其の赤ちゃんは正真正銘、芥川の娘だと云ったこと、そしてしばらくしてお母さんらしき人が来て、芥川と仲睦まじげに話していたので間違いないのだろう。

「あー…？う？」

呆然としていると、お母さんであるAさんの腕の中から治春ちゃんが僕に手を伸ばして来た。

「おや、どうやら治春ちゃんは敦君に興味があるみたいだねぇ」

「人虎…！貴様…！」

太宰さんがそう笑うと、芥川がたちまち青筋を立てた。其の背後には既に黒獣が揺らめいている。

「はーいそこまで」

太宰さんがすかさず『人間失格』を発動させる。

「おや〜？芥川君、良いのかい？Aちゃんと治春ちゃんが見てるよ？」

太宰さんに云われると、さすがの芥川も食い下がった。

「太宰さんがそう云うなら仕方ない…だが、少しでも治春に変な真似をしたならば…」

「する訳無いだろ！」

ぎゃいぎゃいと云い合いながらも、Aさんから治春ちゃんを受け取る。

「あー」

治春ちゃんは、くりくりとした菫色の眼で僕をじっと見つめてきた。

それにしても、菫色の瞳や薔薇色の頬と云い可愛い子だ。髪色以外は母親似なのだろう。

「じ…じーこ？」

前言撤回、父親似だ。何とかして、治春ちゃんには名前で呼んで貰わねば。

「こ、こんにちは、治春ちゃん。僕は敦。ほら、あ・つ・しって云ってみて。はい、『あ』」

「あー？」

「『つ』」「ちゅ」

「『し』」「し」

「『あつし』!」

と云うと、治春ちゃんは首を傾げた後、

「じーこ」

と云った。完敗だった。芥川は其れを見て、

「貴様ごときが治春に名を呼んで貰えると思ったか、愚者め。」

と云い、治春ちゃんを抱き上げると、優しく其の頭を撫で、「賢い子だ」と云い、太宰さんに一礼してAさんと共に帰っていった。


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