優等生くんの裏の顔【knmc】

21:逃げんじゃねぇ ページ21

私を呼ぶ声、これ…剣持君？


「け、もちく…」



両腕を抱えるおじさん達は急いで実験室へ連れ込もうとした。
…っ、いやだ！やだ！


拘束された両足で地面を蹴り、思い切り抵抗する。
おじさん達が足も持ち上げて無理やりにでも運ぼうとした。



「やだっ、やだ！剣持君！！」



剣持君の名前を叫びながら身を固くする。

バキッ、すぐ横で鈍い音がした。
そして解放される右腕側。



見上げると、そのままギターを振りかぶっている剣持君。
瞳孔が開ききっていて、微かに口元は笑っている。

振り下ろされるギター。


再び鈍い音が聞こえ、解放される左腕。





「大丈夫、？」





素早く手足の拘束を外してくれ、立たされる。
何度もコクコクと頷いた。

そんなやりとりをしている間にも奥から黒スーツの人達がやってくる。
それを見た剣持君は私を背に回してギターを構え直した。





「キタキタぁぁああああ」





雄叫びのようなものが聞こえ、振り返る。
あの夜見た白髪と赤メッシュの男の人達が瞳をギラつかせながら
黒スーツの人達に飛びかかっていた。





「そっちばっか見てんなよ！！」





彼らの他にもポニーテールの女の子やおっとりした見た目の子、
ギャルのような見た目の子達が黒スーツに殴りかかる。





「剣持ぃ！サボんじゃねーぞ！」




「んはは。わかってますよ、ってーの」




剣持君も私たちの周りを取り囲む黒スーツ達に殴りかかった。
ギターは壊れ、途中からは素手で倒していた。


私はというと、必死に殴り合いに巻き込まれないよう逃げている。
殴り合いなんてした事ない！無理！



逃げ回っている間に母親だと思っていた人の姿を見つけた。


私はその人の前に立つ。




「あ…、A、ちゃん」




思いっきり、頬を引っ叩いた。
平手打ちの乾いた音が思っていたより響く。



「あんたも、あんたの男も！」



真っ直ぐ目の前の人を見つめる。
なんだ、こんなものか。

その瞳は揺らぎ、瞬き、現実を見ようとしていない。

…逃げんじゃねぇ。




「ちゃんと自分の子供と向き合えよ！逃げんな！！



　自分の身勝手ばっか押し付けんな！私だって人間なんだよ！」




言い切って、目を逸らした。





「…あんたと、親子でいたかった」





目の前の人と話し込むのに必死だった。


＿＿＿＿＿ ここが戦場のど真ん中だと言うのも忘れて。


背後から迫る影に気付くのが遅すぎた。
…しまっ、た。




「＿＿＿＿ 危ないっ！」

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