優等生くんの裏の顔【knmc】

18:最っ悪の目覚め ページ18

ふわふわ、なんだか地に足がついていないみたい。


…あぁ、私、眠らされたのか。
今はどうなってるんだろう。

剣持君、ごめんね。



ぼーっとしていた意識がはっきりとしていく。





遠くで誰かが話す声が聞こえた。

…あれ、なんか、聞き覚えがある。



うっすらと目を開けた。
どうやら私は床に転がっているらしい。

手足に違和感。拘束されているのか。


遠くから聞こえた声の主をそっと盗み見る。





「＿＿＿＿＿＿＿＿ っ、」





思わず、息を呑んだ。










「えぇ、知人の紹介で…。はい。

　あの子にも出て行かれてしまっては私達も困るので…。えぇ。

　…私達に従順な子でいてほしいんです」










お、母さん…？

待って、なんで。
お母さんもあの家にいて…。
なんで、なんで拘束されてないの？
…ちょっと待ってよ。もしかして。




初めて、親という存在に殺意を覚えた。




グルかよ、くそ、くそ！
ほんっとにツいてない。






「…あら、A。目が覚めた？」






酷い頭痛がする。
目の前が霞んできた。

…あぁ、そうか。ショックなんだ。




「最っ悪の目覚めを、どうもありがとう」




これだから、身勝手な大人は嫌いなんだ。
目の前に立つ親の形をした人物を睨みあげる。




「ごめんね、Aちゃん。きっとすぐ終わるわ。
　それが終わればいい子になれるのよ。

　あなたはお兄ちゃんとは違うでしょう？」




勉強至上主義かと思っていたが、ご都合至上主義らしい。
お兄ちゃんと違うのは当たり前だろう。別の人間だ。

自分にこいつの血が流れていると思うと胸糞悪くなる。





「えぇ、そりゃあね。別人だもの」





今すぐ、殴りかかってやりたい。
こいつが憎い。

ふざけるな。ふざけんな。



「先生、お願いいたしますわ」



あいつのひと言で白衣を着たおじさん達が私の方へ来る。
やめろ、来るな。

身を捩って逃げようとしても動けない。

側まで寄って来られ、手を伸ばされる。


「触んないでよ」


噛みついても無駄で、左右の腕を抱えられた。
そのまま連れていかれるのは実験室のようなところ。

実験室へとつながる扉が近付く。
いやだ、やめて、たすけて。


「ねぇ！目を覚まして！」


私の呼びかけなんてあの人には届いていない。
理想の子供だけを求めている。




「はやく、良い子になって帰ってくるのよ」

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