大人になったらお嫁にしてね (ページ5)

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4.自己紹介ページ5

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「って、俺仕事行かないと！」

男はハッとするとばたばたと家の中を走り回り、支度を始めた。
そうか。普通の人は仕事があるのだ。

でも、どんな仕事をしているのだろう？
スーツとかは見当たらないし…

「…お仕事、って何されてるんですか…？」

興味本位で聞いてみた。
職業を聞かれて嫌な気持ちになることはあるのだろうか。もしなってしまったら申し訳ない。

ベッドから動こうとしない、というより動いていいのか分からないAに、男は遠くから返事する。

「あー…声優、って分かる？」

最近割とテレビ出てる奴多いと思うんだけど！と付け足す。
Aは驚き、すぐさまベッドから降りて男を探すと、男はリビングにいた。

「声優…分かります。アニメとか、好きなので…」

「おっ、まじ？何か好きなアニメとかある？」

朝日に照らされたリビングでは彼の顔が良く見えて、さっきは分からなかったけど、こんな顔していたんだな、とようやく分かった。

「ぁ…最近、ハイキュー見始めました。まだ全部は見れてないけど…」

「おー！俺、木兎光太郎やってます！」

「えっ…木兎さん…？！」

「うん！ヘイヘイヘーイ！」

「わっ、本当だ！」

すごい。
本当に、声優なんだ。

いつも画面越しに聞いていたはずの声が目の前にいる。それがなんだか変な感じで、むず痒く感じた。

「そういえば、自己紹介まだだったよね。俺木村良平っていいます！君は？」

じっと見つめられる。
本名言ってもいいのかな…？
でも、今頼れるのはこの人だけだから、言わないとダメか。

「A……東雲、Aです」

「Aちゃんか！これからよろしくね」

にっこり笑うと八重歯が見える。
その笑顔がなんだか無邪気な子供のようにも見えて、こちらもつい笑ってしまう。
可愛らしくて、でも頼もしい人。

「やっと笑顔になった」

「へ？」

「ずっと、落ち込んでるような顔してたからさ」

にしし、とまた笑うと時計を見て「時間やべぇ！」と言いながらまた洗面所やらキッチンやらを行き来する。

Aは彼の言葉を理解すると同時に頭を抱えた。

迷惑かけまくってどうするんだ。申し訳ない。

でも、何故か嫌な気は全くしなくて、ほんのりと頬がピンク色に染まっていた。

「あの、自由にしてていいから！全然話せなくてごめんね！行ってきます！」

いつの間にか玄関に向かっていたのだろう良平さんの声がする。
Aは返事するとパタン、と扉が閉まった。