ヘッドフォン越しのワトソン【ヤンデレ×推理小説】 (ページ7)

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Case1-6 ページ7

「僕がいなくなったら学校でひとりぼっちのくせによく言うよ。僕だって君と別れるためにこんなことしたんだ！」

「えっ……？」

　青血さんは目を白黒させている。

「お前みたいな堅苦しくてうざい奴！さっさと別れたかった。だからこうして評判を下げて、振る理由を作りたかったんだ。ストレス発散にもなるしなぁ？」

……ああ、そういうことだったのか。青血さんは、家柄が良すぎるせいか、かえって対等に話せる相手がいなかった。

　ひとりぼっちになりたくないから、あんなに焦って犯人を探したり、笠井さんを過剰に責めたりしたのだ。

「それに、亜浅Aさん？中学生探偵だかなんだか知らないけど、優秀で将来を期待されてる僕の名誉に傷つけてただで済むと思ってる？」

しかし、そこまでして縋った相手はこのクズだった。悔し紛れの捨て台詞を吐いて彼は逃げていく……彼こそただで済むといいが。

　部屋に残された私達は、少しの間黙っていた。人間が豹変するのを見ると、なんとも言えない重苦しい雰囲気になる。叔父の探偵業を手伝っていると、時々味わう空気だ。

　沈黙を破ったのは青血さんだ。

「ごめんなさい。私、笠井さんが犯人だと決めつけて疑ったわ」

「いいよそんなの……私は、そんな風にしてもらう価値ないし」

　動揺する笠井さんに対し、彼女は深々と頭を下げる。笠井さんはより慌て、こちらに助けを求めて見つめてきた。

「あなたに価値がない？」

　聞き捨てならない。私も一歩前に出る。

「あなたに価値がなかったら、私はあなたの無実を証明したりしなかった」

　青血さんも頭を上げて頷いた。

「本当にごめんなさい。青血の名にかけて、二度とこんなことはしないわ」

　ようやく一件落着、か。こうして仲直りできている人を見るの、爽やかな気分になれる。悪くなかったな、と私もその場を離れようとした時。

「笠井さんって名前は純さんでしょう？すみちゃんって呼んでもいいかしら？」

　青血さんに笠井さんは元気よく「もちろんいいよ！」と答える。すると、青血さんは私の方にも向かって目を輝かせた。

「AさんのこともAちゃんって呼びたいわ！」

「好きに呼んでくれればいいわ……」

　翌日から、教室で私に話しかけてくる人が増えた。

「おはようAちゃん、すみちゃんっ！」

「青血さんおはよう、亜浅さんも！」

　ワトソンの小言も増えた。

「僕のAが取られていく……」

「いつ貴方のものになったのよ」