Case1-5 ページ6
「学校にポスターを貼りに侵入できて、青血さんが転んだ事件について知っている。その条件に当てはまるのは、誠七郎さんだけ」
青血さん本人も一応条件には当てはまるが。今回の場合は彼女が自分で自分の評価を落とすメリットがない。
ワトソンもこれにはため息をついていた。
「誠七郎?ってやつ。彼氏のくせに彼女が嫌がることするなんて、こいつの恋愛観はずいぶん捻くれているみたいだね」
返事こそしないが、同感だ。
その場にいた全員の視線が男に向けられた。一瞬たじろいだ彼は、余裕をアピールしたいのか口角を上げる。
「僕が犯人?まさか!そんなポスターが貼られていたことなんて、僕は今初めて聞いたんだよ」
「嘘ね……ほら、ワトソン。仕事よ」
小声でスマホに呼びかけると、ワトソンから音声ファイルが送られてきた。再生の三角をタップする。
『青血さんを陥れようとしたポスター、誰が貼ったのかわかったわ』
『本当!?』
笠井さんが目を見開く。
「これ、さっきの会話の録音だ!」
「誠七郎さん、ポスターについて何も知らないなら『何の話?』って言うはずよ」
この時反応したのは3人とも全員。だから確実に彼はおかしいのだ。しかし彼は諦めない。
「さっきから揚げ足取りで決めつけて……笠井さんが犯人じゃないって論も、成り立つかどうか!」
彼が笠井さんを指差すと、彼女はびくりと肩を震わせて後ずさった。
「そもそも彼女が疑われたのはポスターが彼女のテストの裏紙だったからじゃないか。それはどう説明する?」
「あら。その話はまだ伝えていないけど?」
彼は『そんなポスターが貼られていたことなんて僕は今初めて聞いた』と言った。それならポスターの裏面について知っているはずがない。
私達の他に裏面について知っているのは、先生と実際に張り紙を行った人間だけ。つまり彼がポスターを貼った犯人だ。
青血さんはわなわなと怒りに震えていた。
「他人に冤罪をかけていたなんて……もう誠七郎さん、もう私の恋人を名乗らないで!」
誠七郎はこれまでの余裕を見せた振る舞いとは打って変わり、激昂して叫んだ。
「僕がいなくなったら学校でひとりぼっちのくせによく言うよ。僕だって君と別れるためにこんなことしたんだ!」
「えっ……?」
……ああ、そういうことだったのか。
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作者名:バニー芳一 | 作成日時:2023年8月28日 13時