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Case5-7 ページ41

写真の1枚には甘花さんだけがいた。それは確実におかしいことだ。なぜなら、授業中の着替えが盗撮されたなら他の生徒も写り込んでいなくてはならないから。

 つまり、その写真だけ別のタイミングで撮影されたとわかる。

「黒幕は依頼者本人ってこと?」

 おそらく盗撮のテスト目的で事前に撮影した写真が、生徒の写り込みがない甘花さんだけの写真だったのだろう。

 自らが被害者だと演出したいばかりに、その写真が彼女が犯人であると決定づけてしまったのだ。

「すぐにでも他の人に伝えよう。五王が間違った推理を披露したら、冤罪が出る!」

「いいえ、今回は私1人で行く」

 例のクラスは明日も水泳の授業がある。また甘花さんは忍び込んでくるだろう。それに合わせて、私も現場に行って話す。ワトソンがセキュリティを誤魔化してくれれば校内侵入はバレないはずだ。

 ワトソンはため息をついたが、私は犯人と2人きりになると決めていた。






「こんばんは。いい夜ね」

 プールサイドに、黒いフードの人物が柵を越えて降り立った。私に話しかけられたその人物の肩がにわかに跳ねた。

「山吹さんに濡れ衣を着せて、コンテストのライバルを消そうとしたのね」

 甘花雛 さん。私が呼ぶと、侵入者は振り向いた。手には薄型の装置。モバイルバッテリーのように見えるが、おそらく小型のカメラの類だろう。

「なぜこんなことを?正々堂々と勝負すればよかったのに」

「そう思いますか?」

 彼女はぎこちなく笑い目を逸らし、語った。動機は嫉妬らしい。甘花さんは山吹さんに劣等感を持っていた。周りを観察したり努力を絶やさないその姿と自分を比較していたようだ。

「あんな努力家には勝てない。それなら蹴落とすしかない、そうでしょう?」

 彼女は確かに口角を上げているのだが、しかしその瞳はずいぶん暗い。

「探偵さんこそ、私と2人で話したいんですか?」

 全員の前で秘密を暴いてしまえば、悪は潰えたのに。そう言った彼女に私は首を振る。

「五王君もジョー君も、なにより笠井さんも貴方のファンだった。彼らの前で暴くのは可哀想じゃない?」

私のクラスメイトはなんだかんだで良い子達だ。バーベキューに誘ってくれたり、私とワトソンの関係を受け入れてくれたり。五王君も捜査には全力だ、ウザイだけで悪い奴じゃない。

 そんな皆を悲しませたくない。

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作者名:バニー芳一 | 作成日時:2023年8月28日 13時

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