ヘッドフォン越しのワトソン【ヤンデレ×推理小説】 (ページ40)

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Case5-6 ページ40

「私、甘花さんのこと応援してますっ！」

　笠井さんが顔を赤くして言うので、彼女らのスマホを覗き込む。美少女コンテストのエントリー画面を見ていたようだ。

「あら、山吹さんの名前もある。彼女も出場するのね」

　先日の誘拐騒動で情報提供してくれた、あざと可愛い系の女の子。山吹・E・メアノ、あの子ハーフだったのか。

　笠井さんは画面をスクロールしながら言う。

「すごいよね。山吹さんも甘花さんも同じクラスで、美人ばっかり集まった教室って言われてるんだよ」

「やだ、そんなふうに言われたら恥ずかしいです」

　甘花さんは耳を触って少し熱そうにしながら、目を伏せた。

　2人は同じクラス？しかし、今見せてもらっている写真の中に山吹さんの写真はない。

　プールの裏には、犯人の物と思わしき足跡。

　足跡は武道場に向かうように続いていた。

　そして、山吹さんの写真だけがない。

　この情報だけなら、まるで山吹さんが盗撮犯のようだ。武道場は彼女が部活をしている場所だし、犯人だから山吹さんの写真だけ無かったと考えられる。

　でも、足跡は偽造だった。1つの可能性に思い当たり、私はトイレの個室に駆け込む。ワトソンとしっかり話したいため、周りに見られたくないからだ。

「これから送るの写真を比較して」

　私は盗撮のうち5枚だけをスキャンして彼に送った。全部じゃなくていいのか、という問いは問題ない。これだけでわかる。

「パッと見た限りだけど、カメラはおそらく2つある。4枚でそれぞれの画角が調べられるはずよ」

「了解。それで、残りの1枚には甘花さんだけが映ってるけど。これと比較すればいいんだね？それほど正確じゃなくて、色無し模型でもいいならすぐできるよ」

　しばらくタイピング音が聞こえた後、ワトソンは息を飲んで叫んだ。

「4枚の写真と甘花さんの写真は、別のタイミングで撮られている……！」

　つまり、こういうことだ。

　犯人の目的は、山吹さんに盗撮犯の濡れ衣を着せることだ。そうすれば彼女は美少女コンテストで優勝できなくなる。泥の足跡などは全てミスリードのためだろう。

　それなら犯人は誰か？重要なのは、甘花さんの写真だけ別のタイミング、つまり授業外で撮影されていることだ。