Case4-7 ページ30
女子達の様子をチラッと確認したが、あまりこちらを気にしていないようだ。こっそり彼に囁き返す。
「1つ目、誠四郎はこの学校の生徒じゃないしOBでもない。校舎裏に怪しまれず侵入する手段がない」
弟の誠七郎が転校した以上、誠四郎とのこの学校に関わりはない。だから校内に入る権限はないのだ。となると忍び込む以外に方法はないが、足が悪い彼には不可能だ。
「2つ目、誠四郎と花葉さんは破局しなさそう……勘と主観も混ざるけれど」
これまで2人の関係が悪くなっている様子が見受けられない。正直これは予想でしかないし、梔子さんの証言に反するが。
「それは……たしかにそうだ」
両者のブログ、SNS。どちらをどれだけスクロールしてもタイトルは幸せそうだし、細部まで読み込んだワトソンですら、2人の間に亀裂を感じられていない様子だ。
それに、恋人に貰った大切な杖が凶器なんてあんまりな話。
「まだ誠四郎とチャットしている?」
「まだ話せるよ。花葉さんを見つけるためならなんでもするって、向こうも乗り気になってきた頃」
「なら『杖を無くしたのはいつか』聞いて?」
「はーい…… 1週間前に兄の披露宴に出たら盗まれたってよ。ってことは、ここにある杖の破片って?」
十中八九、彼に濡れ衣を着せるために誰かが盗んで置いたのだろう。私は1つクッキーを口に放り込む。
「たしかに、もう犯人を発表できるわね」
「嘘ぉ、今ので何かわかるの!?」
勿論だ。やっと情報は出揃った。
座ったまま机を爪で2回弾いた。先程まで友人達と視線を交わしていた少女達が、こちらに注目する。
「事件の真相がわかったわ。万さんは家出なんかじゃなく、誘拐よ」
一気に全員の顔がこわばった。明確に事件性があると伝えられれば、緊張して当然だ。
事件当日に万花葉さんは校舎裏に来ていた。そしてその場で気絶させられ、連れ去られた。そう説明すると、皆が息を飲む。
「つまり犯人は花葉さんと近しい人物で、校内にいても不自然じゃない人……それと、校舎裏が事件現場と断定したのはコレが落ちていたから」
ポケットの中にある証拠品を机に置けば、全員が釘付けになる。血のついた銀のかけらを梔子さんが指差した。
「これ、誠四郎さんのや!」
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作者名:バニー芳一 | 作成日時:2023年8月28日 13時