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Case4-6 ページ29

そして送られてきた写真には、銀の装飾がついたが写っていた。たしかにこのかけらと模様が一致している。


「誠四郎と花葉さんは卓球の会場で出会ったけど、大怪我で引退しているんだ」

 それで杖のプレゼントをしたのか。足元の草を払いながら相槌を打つ。ワトソンの声の音圧が強くなる。きっと溢れ出る感情のせいで、無意識にマイクに近づいているのだろう。

「犯人は誠四郎だよ。別れ話のもつれで、杖で殴り気絶させ誘拐したんだ。2人ともSNSでもブログでもラブラブだったくせに、僕もAとイチャイチャしたい!」

「それは……」

 後半は推理も何もなく願望だ。返事に困って言葉を詰まらせてしまう。

 私が黙っていたのは幸運だった。というのも、校舎裏に予期せぬ人物が来たから。

「亜浅さん、順調ですか?」

 振り返ると、万花葉の友人である鶸さんがいた。驚いてぱちぱちと瞬きする私に、首を傾げる彼女。危ない、ワトソンと話しているのが聞かれなくてよかった。

「どうしてここに?」

「梔子ちゃんと一緒に、探偵さんを探していたんです。お茶か何か差し入れようって……家庭科室の先生が協力してくれました!」

……まあ、ご厚意なら頂いておこう。



 授業でもないのに家庭科室でお茶を飲む体験なんて、中々ない。特別な気分と共に、ちょっと落ち着かなさもある。まさか学校内で女子達と紅茶とクッキーを囲む日が来ようとは。きっと笠井さんや青血さんも来たがっただろう。

 梔子さんが1つ咳払いする。

「ウチが呼んだん、探偵さんと鶸だけやけど……なんで山吹と部長がここに?」

 彼女の視線の先には、やはり仏頂面の部長と、ニコニコ笑う山吹さんがいた。

「気になって」

「いいじゃないですかぁ、山吹はクッキー大好きなんですっ」

 彼女らが楽しく談笑している間、私は誠四郎のブログを見ていた。といっても、タイトルが並んでいるのをスクロールするだけだが。

 『彼女とデート』『テスト学年12位』『明日は兄の披露宴』

 幸せな日々を送っていた分、恋人が消えて辛いだろう。私は拳をぎゅっと握った。ワトソンは雑談でもするみたいに気楽な口調で言った。

「もう犯人発表しちゃっていいんじゃないの?先生はいないけど、ある程度関係者揃ってるじゃん」

「……私は誠四郎が犯人だとは思えないわ」

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作者名:バニー芳一 | 作成日時:2023年8月28日 13時

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