ヘッドフォン越しのワトソン【ヤンデレ×推理小説】 (ページ27)

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Case4-4 ページ27

6限の授業が終わると、私はすぐさま卓球部が活動している武道場へ向かった。柔道部と卓球部が2日毎の交代で使っているらしいが、昨日と今日はちょうど目当ての人達が活動している。

　梔子さんはこちらに気がつき、他の部員達を集めた。

「こちら、花葉のことで調べてくれとる探偵さん。みんななんか知っとることがあったら言うてあげてな」

　といっても熱心に話してくれたのは部長さんだけだった。花葉さんの失踪が事件なのか、彼女が自ら行方をくらませたのか分からないから、情報を言いづらいだろう。

　正直、間違っていても関係なくてもいいから何か言って欲しい。何も情報が落ちなくなるので、やめてほしいのだが。

　唯一協力してくれる卓球部の部長は、顔に表情はほとんど出さない。おそらく感情が表出しづらいだけで、協力する気はあるのだろう。こうして話に来てくれているし。彼女は腕を組んで淡々と話す。

「私達部員は皆と仲が良いから、誘拐だとしても家出だとしても心配してる。1週間前も部員全員でバニバニランドに行ったくらいだ」

「あ〜ウチだけ病欠で行けへんかったときの話せんでください……」

　梔子さんがちょっとうなだれて苦笑いした。ワトソンは「タイムリーな話題だね」と密かに楽しそうにしている。私は部長に目で合図して続けるよう促した。

「事件が起こった昨日、あの子はちゃんと練習に参加していた。他の部員も彼女に会っているから間違いない」

「部活の後に何かがあったってこと？」

　彼女は無表情を貫いたまま首肯した。

「花葉は昨日片付けの当番だったから最後まで残っていた。同じ当番は山吹だから、話を聞くべきだと思う」

「呼びましたぁ〜？」

　可愛らしい、しかし甘ったるい声の少女がこちらに来た。学校と部活のためだけにショートカットの毛先を巻いているあたり、この山吹さんはおしゃれにかなり気を使うタイプだな。

　彼女は小首を傾げる。

「花っちはたしかにペアでぇ、きちんと最後まで2人で片付けしましたよっ。でもその後はわかんないですねぇ〜校門までは一緒にいかなかったのでぇ」

「寄り道した可能性があるっちゅうこと？」

　彼女は唇の下に人差し指を当てて考えると、「そうかもねぇ」とやはりふわふわと返事をした。