ヘッドフォン越しのワトソン【ヤンデレ×推理小説】 (ページ20)

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Case3-6 ページ20

私はチュロス屋の店員達に話しかけた。たしかに3名の店員がそこにいる。

「ねぇ、ここに途中から来た店員はいない？」

1人目はポニーテールの女性だ。

「私は台車を運んでいたから何も知らない」

2人目は小太りの男だ。

「俺は会計とお客様への対応をしてたぞ」

3人目は眼鏡をかけた男だ。

「チュロスを使っていたからわからないが、そこの小太りの男は後から来たな……」

　私はスタッフに目配せすると、堂々と3人目の男を指差した。

「捕まえて、その男よ。それと女性店員も共犯者」

「え、ええ？」

　混乱するスタッフ。何してるの、逃げられるかもしれないじゃない！私が思い切り背中を突き飛ばすと、勢いそのままに「ええいままよ！」と彼は眼鏡の男を取り押さえた。

「待ってくれよ、俺がなんで捕まえられなきゃいけないんだ……？その小太りの男が後から来たんだぞ！？」

　地面に押し付けられた男が身じろぎしながら私を見上げる。通話しているの男も、ためらいがちにそっと話しかけてきた。

「台車で後から来た男が犯人なんでしょ？なら小太りの人が犯人なんじゃ……」

　ヘッドフォン越しの声に「いいえ」と首を振る。私は犯人の前にしゃがみ込んだ。

「叔父が、逃げた犯人に前もって印をつけておいたのよ。そのチュロス屋の制服に糸くずをつけていたの」

　私の片手にある糸くず。

　それを見て、男は高笑いした。

「嘘だな。その糸くず、今俺の服につけていたのが見えてたぜ？」

「……あら、バレた」

　私が目を逸らすと、さっきまで彼を取り押さえていたスタッフが驚いて飛び退いた。

「この人犯人じゃないの！？え、その糸くずは君が今つけたってこと！？」

　自由になった男は立ち上がる。

「そうだ、叔父みたいな男はお前の推理中に後からスタッフルームに来た。俺に糸くずをつけられる隙なんてあったか！？犯人扱いしやがって、名誉毀損で訴えてやる！」

「へぇ。叔父が後からスタッフルームに来たって知っているのね。そもそも事件についての話だってほとんどしていないのに。わかりやすい嘘で助かるわ」

　チュロス売り場は遊園地の中心部にある。壁沿いのお化け屋敷は遠すぎだ。