Case3-3 ページ17
「カッパ役さん。サングラスをかけた男なんて嘘ね?だってこんなに暗いんだから。サングラスをかけた人が、あんなに速く走れるはずないもの」
男が「あ——」と小さく呟いて、見えない壁に押されているみたいに姿勢が少しのけぞった。特殊メイクで表情はよく見えないが。
さて、残りの証言を考えよう。
幽霊役の女性が言った通りなら、犯人はコートを着ている。でも、音響さんの言った通りなら犯人は驚かす側。驚かす側にコートを着た人はいない……。
「A、今ほかのスタッフさんと事件現場の付近を見てみたんだが。叔父さんのカバンとコートが一緒に落ちていたぞ?」
叔父がコートを片手に、スタッフルームに入ってくる。
「ちょうどいいところに来たのね叔父さん。……カッパの服の上にコートを着ていたんでしょうね」
ひったくりをするには妖怪の服は目立ちすぎる。だからコートで隠していたのだろう。そして自分以外の人間に疑いを受けるため、サングラスなどと嘘の証言をしたのだ。
スタッフが警察を呼び、パトカーが来るまでの間、カッパ役の男はスタッフルームに軟禁されることになった。
「お手柄だねAちゃん。さすが俺の弟子!」
「叔父さんのことはお手伝いしてるだけで弟子じゃない」
「それはしょぼーんだね」
ネットで覚えた言葉を使ってニコニコする耕助叔父さんは、私の冷めた視線に目を逸らした。
しばらく遊園地を回り直して、叔父さんは溜まったスタンプシートを交換しに行った。交換所の前にあるチュロス屋でそれを待っている。店員達は大きなワゴンの搬入で忙しそうだ。ぼうっと眺めていると、スマホのバイブが鳴った。
着信画面には、『プレイリスト/ランダム再生』。そんな名前で登録した人は誰もいない。持っていたヘッドフォンとスマホを繋ぐ。
「探偵さん、初めまして。あなたのファンです」
知らない声だった。若い、おそらく歳は私とさほど変わらない少年が話している。私のファンとはどういうことだろう?胸がざわついて気持ち悪い。
「えっと、僕はお化け屋敷にいてあなたを見て」
「あの場にいたの!?」
これなら面食らった。暗かったこともあり、第3者がいたなんて全くわからなかった。片手で顔を覆う。正直、手痛い見落としだ。
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作者名:バニー芳一 | 作成日時:2023年8月28日 13時