ヘッドフォン越しのワトソン【ヤンデレ×推理小説】 (ページ16)

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Case3-2 ページ16

彼のリクエストはお化け屋敷。叔父は意気揚々と暗闇を歩く。足音でも人間の陽気さってわかるのか、とちょっと感心して何度か頷く。

「この中にスタンプラリーのスタンプが1つあるんだ」

　入場列がとんでもなく混んでいたのは、それが理由か。出てくる提灯の妖怪や、金切り声を(スピーカーから)あげる女をぼうっと眺める。若干作りがチープだから怖くはない。

　耕助叔父さんも怖がりではないので、ゆるく雑談しながら歩く余裕がある。暗いことしか問題がない。

「うわっ！？」

　突然彼は大声を上げた。ドテッ、と音を立てながら床に伏す。そして1つの黒い影が過ぎ去っていった。

「叔父さん、しっかり。足元が見えなかった？ぶつかられたの？」

「いや、ひったくられた」

　首を振りながら立ち上がった叔父さんは、タバコの吸いすぎでほとんど体力がない中、ひったくり犯を追いかけ始めた。

　私は走りたくなかったので、どこかで追いつければいいやと思いつつ順路を歩く。はたして、彼は2つ隣の部屋で腕を組んでいた。ぜぇはぁと肩を揺らしている。

「犯人を見失った。この部屋の幽霊役の人達と話をしたいところだな」

　顎髭をさすっているのを見上げながら私は言う。

「私が犯人を見つけるわ」

　彼は意外そうに片方の眉を上げたが、頷いて私に道を譲った。

　私が遊園地のスタッフに話をすると、彼はお化け屋敷スタッフのスタッフルームに通してくれた。男はチェッと舌打ちをする。

「ここ最近お化け屋敷の中でひったくりが相次いでいるんだ。探偵に見つけてもらえるならなにより！」

　部屋の中にいたおどかし役は3人。情報提供を求めると、3人全員が了承してスタッフルームに集まってきた。

　幽霊の衣装を着た女が言う。

「犯人ならコートを着た男でしたよ。顔はわかりませんが」

　音響係の男が言う。

「暗いから男かどうかはわからないや。オレちゃん、視力悪いんスよ。でも一瞬おどかし役の数が足りなくなってたような気がするっスね〜」

　カッパの服を着た男が言う。

「俺がみたのは、サングラスをかけた男が走り去る姿だったな」

　なるほど。わかりやすい嘘が紛れている。私は犯人を指差しながら言った。