ヘッドフォン越しのワトソン【ヤンデレ×推理小説】 (ページ14)

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結論から言おう。今日のバーベキューは最悪だ。

　バレー部の面々は、皆バケツに顔を埋めている。

「おえええ……」

「うえぇ、げほっげほっ」

　先程まで楽しそうに食べていた肉を全員で吐き戻す始末だ。うまく出せない生徒は、バーベキュー会場の職員に手伝われている。

　どうやらこの会場に、毒物の持ち込みがあったと通報されたようだ。だから全員で食べたものを吐くことになってしまった。せっかくの肉が台無しになっている。

　あちこちからくぐもった呻き声。喉の奥を指で触りながらチラリと視線をやると、笠井さんも職員にさすられながら食べたものをもどしていた。

──ヴヴヴッ

　ポケットの中でスマホが着信を告げな。大惨事が起こる中、私はひっそりトイレの手洗い場まで行き、ランダム再生ことワトソンの通話に応じた。

「……もしもし」

　返事はない。かけてきておいて無言なのは、彼が怒っている時のわかりやすいサインだった。

「虚偽の毒物通報をしたのね？」

「身内でもない奴の手料理食べるなんて浮気だよね！？」

　ワトソンが机を殴ったのか、激しい衝突音が聞こえた。手料理といってもバーベキューに手料理も何もないような気がするが。

　語気が噛み付くようなになっている自覚があるのか、彼自信をなだめるように声を落として続ける。

「A、依頼で男と話すのは仕方ないし全然いい。でも、楽しくソイツらの作った料理とか焼いた肉食べないで。嫉妬させないで」

　私は目を伏せて首を振る。これはやりすぎだ。私に吐かせるならまだしも、関係ないバレー部の生徒達がどれだけ巻き込まれたか。

　それに今のことで1つの疑念が生じた。不満を強調しようと、低くはっきりした声で私は問いただす。

「どうやって私を監視してるの？私はこのバーベキューについて、貴方に話してない」

　彼が深くため息をついたのが聞こえた。

「今更？僕に隠せることの方が少ないよ。好きな人のことはなんだって知りたいに決まってる。今日みたいな浮気だって防げる」

「さっきから浮気って、私もあなたが恋愛関係になったことなんてないでしょう？」

「……Aさん？誰と話してるの？」

　ぎくり、振り返ると、怖気切った顔の笠井さんが立っていた。

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Tips：Aのデフォルト苗字、「亜浅」はポアロの親友アーサーから来ています。