ヘッドフォン越しのワトソン【ヤンデレ×推理小説】 (ページ12)

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Case2-4 ページ12

ワトソンがおずおずと切り出す。

「大丈夫？バレなかった？っていうかあの男誰？」

　異性と話していたせいか、後半はちょっと音圧が強かった気がする。マイクに近づいて話しているのだろう。

「どうにかなったわ。あれは依頼者でクラスのガキ大将よ。依頼者、ね」

　彼が依頼主だとわざと強調して言えば、曖昧な相槌が聞こえた。どうにか納得してくれたらしい。

「じゃあ、私は現場に戻るわ」

「え？もしかして、今のだけで犯人がわかったの？」

「ううん。でも2択までは辿り着いたわ」

　自信を持って答える私に、彼は口笛を吹いた。

　私が事件現場に戻ると、顧問の先生はいなくなっていた。今は職員会議を開いて、警察に連絡すべきか校長と話しているらしい。

　つまりここにいるのは私と笠井さん、城くん、副部だ。

「鍵の管理について教えて」

　私は1人目の容疑者の方に体を向ける。私にまっすぐ見つめられた副部は、少し意外そうに目を見開いた。次に肩をすくめる

「そりゃ、先生に必要な部屋の鍵を預かるんだよ。普段の部活なら、体育倉庫の鍵とかを使うんだけどね」

　副部はタグがついた鍵をポケットから取り出した。

「この談話室の鍵だよ。さっき用務員さんに返してもらった」

「今日はその鍵だけ預かっていたの？」

　城くんが会話に割り込んだ。

「副部が預かってたのはその鍵だけだぜ」

　彼は「オレが見てた！」と腰に手を当てて胸を張る。鍵のタグをよく見ると、たしかに談話室と書いてある。なるほど、おかげで犯人が分かった。

「一度この部屋を出ましょう」

　廊下に出ると、3人はお互いの顔を見合わせながらついてきた。私は顎をくいと上げ、鍵を使うよう指示した。

　訝しげに副部は扉の前に立つ。

「…… 挿さらないっ！？」

「そうでしょうね。そこは談話室じゃない、談話室の表札を貼っただけの空き教室よ。鍵穴には合わないわ」

　私は彼の手から鍵を取ると、隣の部屋の鍵穴に挿した。すんなりと穴に入った鍵はかちゃりと鳴って解錠を通知した。

　その場にいた他の生徒はハッとして息を呑んでいる。城くんが笠井さんの耳元に、手でメガホンの形を作る。

「あいつ、いつの間に部屋を調べたんだ？笠井知ってるか？」

「わかんない、探偵ってすごいんだね」

……その声量で話されたら聞こえるのよ。