4* ページ19
〜翔子side〜
・
「んじゃあな。すんげぇ期待してる」
門前まで、あたしを送り届けてくれたその男は
ふんわりとした屈託のない笑顔を向けて
踵を返し、夕暮れの街に溶けて行った。
…ふと、軽くなった手に妙な物足りなさを
感じてしまった事に自分でも驚いている。
返事の帰って来るはずのない後ろ姿に向かって
溜息吐いてから、あたしは厳つい装飾が
散りばめられている鬼屋敷の中に入って行った。
・
「おっ、お帰りなさいませ、御嬢…っ！
出迎えも至らず大変失礼致しました…っ！！」
「…ただいま。あんたらさ。
いい加減にその呼び方辞めてくれない？」
「ひぃっ！もっ、申し訳御座いません！
して、どの様にお呼び致せば…？」
「別に名前でいいわよ。明日から宜しくね」
「かっ、勘弁してください、翔子様…っ」
道すがら、出会した黒服達に一斉に頭を下げられ
挙句の果てに返ってきたのは
昔から気の乗らない、その呼び方。
側近の上田を覗いた、下っ端の幹部達は
あたしの事を昔からそう呼んでいる。
別にいいトコのお嬢様でもねぇってのに…
お父様は、どんな教育をさせてんのかしら。
真っ青な顔をして慌てている黒服達をすり抜け
厨房の方へ黙々と足を進める。
さてと。早くやっちまいますかね〜
赤いエプロンを腰の位置でキュッと
リボン結びして
念の為、短い髪をひとつに束ね
入念に冷水で手を洗う。
黙々と例の準備を進めていると
「姉貴…これは、まさか秘伝の奥義では…？」
背後から、突然投げ掛けられた声に振り向くと
先程思い浮かべていた人物の顔が
幾つかお洒落な買い物袋を引っ提げ
あたしの手元を覗き込んでいて。
「お帰り、上田。
悪いわね、急に頼み事しちゃって」
「それは、構いませんが…
いくら直属の娘であらせられる姉貴が
想い人に対し、この様な仕打ちは
如何なものかと…」
「あら。簡単よ。貴方が父様に報告しなければ
問題ないでしょう？」
「…尽力致します。もし、彼が文句の1つでも
言うようなら、こちらでお呼び立てを。
本物の夢の世界に、飛ばしてやりますから」
「ふふ。心強いわね。でもそんなに
心配しなくても大丈夫よ
彼ならね」
自分でも、下衆な考えだなんて承知済。
でも、遥かにこっちの方が有利なんですもの。
どんな反応してくれるのかしらね？
苦笑いの上田を他所に黒い笑みを浮かべながら
仕上げの群青色のリボンを、キツめに結んだ。
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星羅*(プロフ) - きよさん» きよさん、ご無沙汰しております！実はそうだったんですよぉ…リョウくんとの想いの狭間で今揺れまくっちゃってます。サトシの真意に関しましては今後全て明らかになりますので次更新も是非遊びにいらして下さいませ！今回もありがとうございました！ (2020年10月3日 9時) (
レス) id: c8d688db8a (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - 星羅さん、更新ありがとうございます。ショウの初恋はサトシだったんですね。邪険にされたら辛いわけですね。女の子の格好をしていたとはいえ、サトシは本当に気がついていないのか謎ですね。なんにしても二人とも素直になってほしいです。続きの更新お待ちしています。 (2020年10月3日 0時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - いえいえ、こんな時にお話しを更新してくださる星羅さんや他の作者様の方がありがたいです。お話しを読ませてもらって、いつもと変わらない幸せな癒され空間に浸れるので、本当に感謝しています。ありがとうございます。 (2020年3月28日 20時) (レス) id: e294ac0748 (このIDを非表示/違反報告)
星羅*(プロフ) - きよさん» きよさん、こんばんは！この大変な状況の中で早速遊びにいらして下さり本当にありがとうございます！そうなんです、お姫ちゃんには実は重大な秘密が…？今回は拙作で1番もどかしい2人を表現出来たらなんて考えておりますのでそちらも合わせて楽しんで頂けると幸いです！ (2020年3月28日 19時) (レス) id: 44ba3bae8a (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - 星羅さん、更新ありがとうございます。「 Fake Love 」お待ちしてました。翔くんには何か秘密があるみたいですね。姫さまなんて似合いすぎです。そして素直になれない二人がまたもどかしいですね。次回も楽しみに待っています。 (2020年3月28日 16時) (レス) id: e294ac0748 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星羅
| 作成日時：2018年11月29日 21時
