23:阿部ちゃんってズルい ページ23
*
〈Ryohei.A〉
『亮ちゃん、』
阿「A、“阿部先生”でしょ」
そう注意すればいつものように不満げな表情を浮かべる。
『阿部先生、“A”でしょ?』
仕返しと言わんばかりにドヤ顔で言ってくるけど、そう呼ばれるの嫌がるくせに。
阿「A、」
『………』
ほら、更に歪む表情。
不貞腐れて無言になる。
『…やだ。
亮ちゃん、誰も居ないし良いじゃん…』
そういう問題じゃないんだよ、って何度言っても納得はしてくれない。
───放課後
教卓に置いたままになっているであろう指示棒を取りに教室へ戻れば、何故か一人窓際の目黒の席に座り外を眺めているAの姿があった。
そして今に至る。
阿「なんで目黒の席?」
目黒とAが付き合ってるんじゃないかって他のクラスの子が騒いでいた。
何故か俺にまで聞いてくるし…。
いや、高校生の恋愛事情なんかいくら担任だからって教師が関与するところじゃないでしょって笑って流したけど……
目黒の席に座るAを見て、噂は本当なのかななんて気になってしまった。
指示棒を手にしてAの座る目黒の席まで自然と向く足。
『ん〜?他の席でも良かったんだよ、窓際なら』
阿「なんだ、そっか」
何故か安堵したように溢れる息。
そんな不思議そうに見上げられても、俺だって何でかなんて答えはないんだよ。
『亮ちゃん、』
阿「…せめて苗字にして」
『…阿部ちゃん、』
阿「なぁに?」
ただ呼びたかっただけなのか、先生を付けろと言われなくなった事に満足したのかAは何でもないと緩く首を横に振って視線を校庭に戻した。
阿「誰か待ってる?」
『しょっぴー』
阿「どこ行ってんの?」
『先生にお呼ばれ。英語の小テスト、盛大に間違えてたから(笑)』
阿「Aは大丈夫だったんだ?」
『うん、やれば出来る子なんで(笑)』
阿「偉い、偉い」
思わず手を伸ばし頭を撫でようとしたけれど、指先が髪に触れたところで手を引いた。
何故だろう、いつもは普通に撫でているのに躊躇ってしまった。
Aが複雑な表情で俺を見る。
『阿部ちゃんは…ズルいよ』
阿「唐突だなぁ(笑)何が?」
『私を置いて大人になっちゃったんだもん…』
そんな風に言うAの方がよっぽどズルい。
置いて行きたくて置いてった訳じゃないんだよ…年齢差って埋まるものじゃないだろ。
…せめてAが早く、もう少し大人になって。
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ゆゆ(プロフ) - ささん» けしからん、もっとやれ!状態です(笑)皆は書いてる様子をどう見てたんだろう…← (2019年10月28日 9時) (レス) id: ac690e68a8 (このIDを非表示/違反報告)
さ - 黒板の相合傘は罪ですね! (2019年10月28日 2時) (レス) id: 53a7921132 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - ちあきさん» ありがとうございます!読んで頂けて感激です!マイペースではありますが少しでも楽しんで頂ける話が書けたらな、と思います☆ (2019年10月18日 23時) (レス) id: ac690e68a8 (このIDを非表示/違反報告)
ちあき - いつも楽しんで読んでます。早く読みたい気持ちではありますが...ゆゆさんのペースでの更新を気長に待ってます^^更新頑張ってください。 (2019年10月18日 23時) (レス) id: 8d08173618 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 阿部ちゃんLoveさん» コメントありがとうございます!ビビッてきたって何だか嬉しいです^^ 楽しんで頂けたら幸せです☆ (2019年9月20日 10時) (レス) id: ac690e68a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆゆ | 作成日時:2019年9月12日 21時