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「私、幸せだった。
…貴方が死んでからはね、毎日が色褪せていたけれど沢山の人達に支えて貰った。
あまね様。御館様。柱の方々。炭治郎達や蝶屋敷の女の子達。そして、有一郎の存在。
もう、もう充分よ。これ以上なんて望まない。」
「っでも、」
「それにね、神様っていると思うんだ。」
一度は恨み憎んだ神様。
そんな存在いないとはわかっているけれど。
でもこうやってもう一度。愛しい人と会うことが叶ったのは、神様がいるからかもしれない。
なら私は、それに縋ってしまおうじゃないか。信じてしまおうじゃないか。
「有一郎。」
Aは震える足でゆらゆらと有一郎の元に一歩、また一歩と歩みを進める。
嗚呼、目の前に、愛おしい人がいる。
「私は、神様に縋ってる。でも、貴方にもっと縋ってる。有一郎がいないと私、駄目みたい。」
ぎこちないけれど、何処か愛おしそうにAは微笑んだ。
有一郎は何かが頬を伝う感覚を覚えた。
___涙、か。
「…ああ、良いよ、良いよ。縋っていて良いよ。神様にでも仏様にでも。
そして、俺に縋っていてくれ。」
有一郎はその手を思いっきり伸ばすと、愛しい人をその腕の中に閉じ込めた。
自分の胸の中に埋め込んでしまいそうなくらい、空気の分子すら入り込めないくらい力強く。
放さない。もう二度と、放してやるものか。
Aは縋るように有一郎の背中に腕を回した。そしてぎゅっと有一郎の肩口に顔を
「もう二度と、私を置いていかないで…」
「うん…」
「貴方に、いつまでも縋らせて…」
「お前になら喜んで縋られるよ…」
何か溜め込んでいたものが一気に堰を切ったようにAの胸の中から溢れ出した。
それは瞳から水分となって体外に押し出された。
有一郎がいなくなってしまったあの日から。Aの心にはぽっかりと何か大きな穴が空いてしまっていた。パズルの最後のひとピースを失くしてしまったような、そんな感覚。
でも、その心に空いた大きな穴は。彼に抱き締められただけでじわじわと満たされていったのだ。
彼女にとって彼は、言わば心の一部だったから。
「好き、好きだよ、大好きだよ…」
「俺も…っ…Aのことが好きだ、愛してる。だから…」
___もう二度と、離れるな。
Aは涙でぐちゃぐちゃになった顔で笑った。
___当たり前でしょ。端から貴方から離れる気なんてさらさらないもの。
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白霞(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ありません。複数回読んで頂けたのですね…!感謝の限りでございます。そんな風に言ってくださりありがとうございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年9月15日 7時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - 何回でも見に来て涙腺崩壊させられてます。しかも作者様一人一人に返信までしてくださっていて…!作者様の良い人が滲み出ている…なんというか、はい、土下座したいくらい素晴らしい作品でした。このお話、ずっとずっと語り継がれていたらいいなぁ… (2020年9月2日 22時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて光栄の極みでございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月30日 21時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
シバ - あれ……………目の前がぼやけてきたぞ…… (2020年8月30日 11時) (レス) id: 344258cf85 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - かりんさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて感謝の限りです。最後まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年8月21日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年6月20日 20時