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俺の前からその漆の髪を靡かせて消えたAの後を、俺は恐る恐る付いて行った。
すると案の定、無一郎の元にやって来ていた。
「ごめんね、無一郎…有一郎と話せなかった…」
「…大丈夫だよ、Aが悪いわけじゃないから。」
無一郎はそっとAの手を握った。
羨ましかった。俺はその小さな手を握り締めることができないのに、無一郎は難なくやり遂げる。
やっぱり俺は選ばれた人間じゃないから。誰かに優しくするなんてできないんだ。
「……有一郎、ちゃんと休んでる？」
「え？」
Aが発したのは予想外の言葉だった。無一郎も、陰ながらこっそりと話を聞いている俺も驚いてしまった。
「あ、えっと…有一郎、ほんのちょっとだけ隈、できてたから…」
俺は目を見開いた。自分でもわかるかわからないかくらいの薄い隈。Aはそれに気がついてくれた。
俺のことを本当によく見てくれているのだと嬉しくなってしまった。
無一郎は少し顔に影を落とすと、不安げな声色で話し始めた。
「兄さん、僕が休んでって言ってもなかなか休んでくれなくて…」
「そっか…」
「もしかしたら僕と寝るのが嫌なのかも…」
「そ、そんなはずないよ！有一郎は確かにきついところもあるけど…凄く優しくて、何より無一郎のこと、誰よりも大切に思っているじゃない。」
優しい
こんな俺にも優しいと言ってくれるお前の方が優しいだろう。
それに俺はちっとも優しくなんてない。
暴言を吐くことでしか弟を守れない、出来損ないの兄だ。
優しい人っていうのは、選ばれた人間なんだ。
俺は違う。選ばれた人間じゃないから優しさの欠片だって持ってない。
でも、それでも。
Aに“優しい”と称されたことが、涙が出るくらい嬉しかったんだ。
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白霞(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ありません。複数回読んで頂けたのですね…！感謝の限りでございます。そんな風に言ってくださりありがとうございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました！ (2020年9月15日 7時) (
レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - 何回でも見に来て涙腺崩壊させられてます。しかも作者様一人一人に返信までしてくださっていて…！作者様の良い人が滲み出ている…なんというか、はい、土下座したいくらい素晴らしい作品でした。このお話、ずっとずっと語り継がれていたらいいなぁ… (2020年9月2日 22時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - シバさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて光栄の極みでございます。最後まで閲覧頂きありがとうございました！ (2020年8月30日 21時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
シバ - あれ……………目の前がぼやけてきたぞ…… (2020年8月30日 11時) (レス) id: 344258cf85 (このIDを非表示/違反報告)
白霞(プロフ) - かりんさん» コメントありがとうございます。そのように言って頂けて感謝の限りです。最後まで閲覧頂きありがとうございました！ (2020年8月21日 0時) (レス) id: 7828c1c33e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白霞
| 作成日時：2020年6月20日 20時
