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あれから。

一晩中ひっきりなしに私の電話は鳴り続けていて
そこに映る"嘉山常務"の名前を見るたびにうんざりして

携帯の電源を落としたのは夜中の2時を回っていた。


もっと早くそうしても良かったけれど
やっぱり許せない中にも最後の情というのが残っていたから
余り強行手段に出たくはなかった。


だけどもう限界だ。

追いすがってくる男に嫌悪こそ抱けど
惚れ直すことはないと確信する。




同じ部の部長である嘉山と
仕事面での関わりは多少懸念はあったけど

人目のあるフロア内ではさすがに
何か起きたりはしないだろう。



休み明け、オフィスに出勤して
視界の端に捉えた嘉山は何か言いたげにこちらをみていたけど

挨拶をしてデスクに座る私に何か言ってくる気配はなさそうだ。



もうひとつの懸念としては
隣の席の登坂。


平静を装う準備はできているけど
まだ彼は出勤していないらしく
少しだけホッとする自分もいる。



そのとき



「麻倉さん!お客様です」



事務の女のコがフロアの入り口で私を呼ぶ。


目をやればそこにいたのは





「今市…さん」

「おはようございます。朝からすみません」




スーツ姿の今市。

オフィスの端々からは女子社員の色めき立つ声がする。




「この前の契約の追加書類、お持ちしました 」

「…わざわざ、こんな朝から?」

「今日出張なので、朝しか時間なくて。
…それに」




今市は封筒を私に渡すと
どさくさに紛れて私の手に触れて
少しだけ背を屈めた。





「どうしても、会いたくて、Aさんに」



そう囁き、ニコッと笑う今市。





不意討ち。




動揺で不覚にも思わず目が泳ぐ。





「…ご苦労様、です」

「それじゃ、また、連絡します」




フロアから出ていく今市
それと同時にあちこちから聞こえる女子社員の声。



まぁ、いい男なのは認めるけど
あの笑顔の裏にある黒さを
この女子社員たちは思い付きもしないだろう。


書類を置き、別室へと向かう途中







「麻倉さん」





今市に気を取られて忘れていた。


誰もいない廊下に、追いかけてきた元不倫相手。






「…そんな顔するなよ、傷つくだろう」


「そんな顔をさせたのは常務です。では失礼します」

「待てって」



常務の手が私の手を掴む。

こんなところを誰かに見られたら大変なことになる。




「やめてください」

「話があるんだ」




…私は話すことなんかないのに。

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NEE(プロフ) - みほこさん» ありがとうございます!ビューネくんもそろそろ終わるはずなので!パート2ともどもお楽しみくださいませ(*^^*) (2016年9月8日 23時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - MYさん» ありがとうございます!大人な直人さんに切なくなりつつきゅんしちゃってください(*^^*) (2016年9月8日 23時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - サクラさん» ありがとうございますー!隆二メインですが直人さんにもきゅんきゅんしていただけて嬉しいです(*^^*)やはり直人さんは大人キャラが似合いますー! (2016年9月8日 23時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
みほこ(プロフ) - いつも楽しませていただいてます♪ビューネくんも大好きです♪つづき楽しみにお待ちしていますm(__)m (2016年9月7日 22時) (レス) id: 6b3f9fe695 (このIDを非表示/違反報告)
MY(プロフ) - 直人さん泣きそうかっこいいです (2016年9月7日 19時) (レス) id: ed4e215e6e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NEE | 作成日時:2016年7月31日 20時

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