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「常務、ここは会社です」

「どうして電話に出ないんだ」




…会話が噛み合わない。

いくら人通りの余りない廊下とはいえ
見つかればあらぬ噂を立てられかねない。


それも少し前までそれは真実だったのだから
余計に、マズイ。




「それはプライベートなことなので、ここでは」

「さっきも今市が来てたな!」




…なるほど、それが火をつけたわけ?




「仕事です」

「じゃあこの前のはなんだ」

「プライベートは自由なのでは?
そちらこそ、お楽しみのようだったし」




そう冷たくいい放つと
グッと黙りこんだ嘉山。



もう、やめて。


話せば話すほど冷めるから。





「なぁ…本当にもう終わりなのか?」

「そうするしかないかと」

「きみはそれで平気なのか!?そんな簡単に終わりに出来るのか?」





くどい。




無視をしようと踵を返す私を追いかけてくる気配を感じて

少し足早に歩けば



後ろから強く手首を掴まれるのと
目の前から誰かがぶつかってくる衝撃とで

私は足止めをくらった。






「っと!ごめん……って、またA!?」

「…せん、ぱい」





ぶつかってきたのは、直人さんだった。

後ろで嘉山に手を掴まれたまま私は硬直する。





━━━見つかった。




初め私にしか気付いていなかった直人さんは
私を見て

そして嘉山を見て

嘉山が掴む私の手を見て
きょとんとしていた。






…どうしよう、なんて説明すれば…




「…もぅー、A、ちゃんと前向いて歩かなきゃダメだよ?危ないだろー?」


「…え…」



何事もなかったかのように
いつもみたいに私の頭をポンポンとたたく直人さん。



そしてゆっくりと嘉山へ向き直ると
そっと掴まれた手を離すよう促した。




「嘉山常務。…こんなのでも一応女ですから
乱暴はちょっと」




こんなのは余計です、とか
いつもなら言う私だけど



直人さんの助けに、何だか泣きそうになる。





「あ、あぁ…」

「常務、そろそろ役員会議じゃないですか?」

「そ、そうだな、じゃあ」





そそくさと退散する常務を見送ると
ため息をついた直人さんは

私の方へと顔を向けた。





「お前、大丈夫?」



苦笑いの直人さんの顔を見て
安心して視界が歪む。






こんな弱み見せたくないのに
会社で誰かに涙を見せたことなんかないのに



私の様子を見た直人さんは
困った顔をしながらも
そっと私の頭を撫でるから




私の涙はとうとう瞳から溢れた。

32―今市&登坂→←30



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NEE(プロフ) - みほこさん» ありがとうございます!ビューネくんもそろそろ終わるはずなので!パート2ともどもお楽しみくださいませ(*^^*) (2016年9月8日 23時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - MYさん» ありがとうございます!大人な直人さんに切なくなりつつきゅんしちゃってください(*^^*) (2016年9月8日 23時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
NEE(プロフ) - サクラさん» ありがとうございますー!隆二メインですが直人さんにもきゅんきゅんしていただけて嬉しいです(*^^*)やはり直人さんは大人キャラが似合いますー! (2016年9月8日 23時) (レス) id: 826e656fd3 (このIDを非表示/違反報告)
みほこ(プロフ) - いつも楽しませていただいてます♪ビューネくんも大好きです♪つづき楽しみにお待ちしていますm(__)m (2016年9月7日 22時) (レス) id: 6b3f9fe695 (このIDを非表示/違反報告)
MY(プロフ) - 直人さん泣きそうかっこいいです (2016年9月7日 19時) (レス) id: ed4e215e6e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NEE | 作成日時:2016年7月31日 20時

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