Mr. RIGHT? 3【O】

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リムジンの中に新聞がいくつか置かれていた。
　
いつもと同じ銘柄の新聞を手にとる。


通勤中新聞を読むときの癖で
何となくいつものように各ページの左上を読み流していると

ふと、目についた記事。



多分いつもなら気にも止めなかっただろう。
　
今日だったから
たまたま気付いたその記事は

見出しが


"トサカグループ 会長逝去"とあった。
　
　


…トサカ。

　
昨日、パウダールームで会ったあの女性は
確かにそう言った。


記事の中身は


会長が逝去しお別れの会が開かれたということ
ただその詳細は関係者以外には内密であるとのこと

さらに次期社長のお披露目があったというような内容だった。


　
この記事だけでは
あの男との関係性はわからないし
そもそも全くの無関係かもしれない。


ただ、あのとき聞いた"トサカ"の名前が
強く印象に残って、離れなかった。
　
　



　




　

「お疲れ！めっちゃ久しぶりじゃん」

直人からの誘い。
かなり久しぶりに飲みにやってきた。

　
それもそのはず。

またあのマスカレード以来、あの鍵の部屋に行っても
彼と会うことはなくなった。
　

さすがに連日何もないと心が折れる。

代わりにというつもりはないけど
たまには、と直人と飲むことにした。



「で、最近どう？」

「…特には」

「マジか！まぁ俺もイマイチでさ」


　
何となく、嘘をついた。
もうあの男のことは誰にも言えない。
　
ただ

つい聞いてみようと思ったのは
本当にたまたまだった。
　



「直人、トサカグループって知ってる？」




私の問いに

直人は目をまるくした。


「え？…お前トサカグループ知らないの！？」

「え？知ってるの」

　
思いもかけないところで得られそうな情報に
ドキリと胸が波打つ。
　


「あれじゃん？平成の不動産王」


「…なに、それ」


「有名だろ？この辺りのビルとかホテルとかの持ち主で特にこの駅回りなんてほとんどがトサカの持ち物だって話。
あれだよね、前に会長が亡くなって、跡目候補が孫だって」


ビル

ホテル


もしかして、あの男は…。


　
「…名前とか、わかる？」

「いやー、確か顔も名前も出てなかったんじゃない？
何か色々あるんじゃないの？
金持ちすぎて命狙われたりとかさぁ」

「…そう」

　

体が震えそうになるのを堪えた。

この仮説が正しいとしたら


「この景色はあなたのもの」だと言ったのは
冗談ではなくて



本当にあの景色は、あの男のものだったのだ。

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