佰陸拾参 ページ22
五条side
A「……監視役って
ここまでするものなんだね。」
「…え？」
Aの唇を堪能した後
一人用の狭いベッドに、二人で入る。
腕が余るほど細い身体を抱きしめると
Aは背を向けたまま
まるで壁に話しかけるみたいに
そう呟いた。
A「…………でも
悟に迷惑をかけるようなことはしない。
だから…自分の部屋で
ゆっくり休んで。」
自分の部屋で、ねぇ…。
それは、『出て行け』って言葉を
丁寧に包んで、遠回りして
届けたつもりなのかな。
まったく…流石に傷つくよ。
寮の自室よりも、自宅の寝室よりも
Aの傍にいるのが好きだから
こうしているのに。
その可能性すら
考えてくれないなんてさ。
「それ…本気で言ってる？」
薄い肩を掴んで、仰向けにして
両腕をベッドに押し付けて
薄暗い部屋に灯る
明かりのような瞳を見下ろす。
A「………」
あーあ、まただ。
また、『分からない』って顔してる。
その顔を見ると、どうしようもなく
教え込みたくなる。
僕の言動を、何一つ好意として
受け取ろうとしないその心に
刻み込みたくなる。
言葉が駄目なら、身体で。
Aが病み上がりじゃなきゃ
確実に襲ってる。
僕の愛が分かるまで、何度でも
その身体に教え込む。
でも今のAには
そんな欲を受け止められる体力はない。
ああー…、もう。
他の全てを失ってでも欲しいものが
手に入らないことが
こんなにも苦しいなんて
Aに出会うまで、知らなかったよ。
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作者名：るびー | 作成日時：2024年2月15日 9時
