mission 21 ページ21
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「なっ、なにすんだよ！」
「ご褒美。あの街に来たら続きしてやるよ」
「いらねぇっ！」
「じゃあ二度とあそこに踏み入れるなよ。いいな？」
顎を掴まれたまま目を合わされるから、変に逸らせなくなって黙ってしまった。
なんだよ、いきなりキスなんかしやがって。
しかもそれを脅しに利用するなんて、人として狂ってる。
「……嫌なら拭ってもいいんだぞ？」
そう言われ、ハッとして口元を拭く。
制服の袖で擦りながら、薮に目を向けた。
「なんなんだよ。いきなり、こんなっ」
「いやぁ、可愛いな、と思って」
「へぁっ！？」
「嘘だって。俺がそんなこと言ったら流石の八乙女も気持ち悪いだろ」
いや、流石の八乙女ってなんだよ。
「ほら、次の授業始まるから」
「うわ……昼食べそびれた」
「ドンマイ」
「お前の所為だ」
俺のどこが面白いのか、クスクス笑っている。
その笑顔、皆の前でも見せればいいのに。
「そういえばさぁ……なんで、笑わねぇの」
「どうしてだと思う？」
「……分からねぇから聞いてんだけど」
「分かったら聞け。それまでは秘密、な？」
またまた頭を撫でられて今度は本当に立ち去った薮。
普通生徒を置いてくかっての。
「はぁ……」
「光くん！溜息吐かないの！」
「大ちゃん……」
お前はいいよな、体育だってだけではしゃげてさ。←
「なにがあったんだか知らないけどさ、まだあと2時間あるんだから、頑張ろう？」
「次が体育とロングホームルームだからって楽しみなんだろ」
「よくお分かりで！」
「あぁもう動きたくねぇ……」
「なになになに！？いつもなら楽だからこの２時間は受けるかーって言ってるのに！？」
「それ俺がいつもサボってるみたいな言い方だな」
「え、そうでしょ？今日だって午前中──」
「あああああああああ！」←
「今度はなに？」
呆れた声で……いや、目でも全身で呆れながら溜め息を吐かれた。
「思い出しちゃった……。また、あの感触を……」
自然と手が唇に近づいていく。
もうなにかを食べるだけで、喋るだけで、口を使うだけであいつの顔を思い出しちまう。
こりゃ重症だ。
「はぁ……」
「まさか光くん」
「な、なんだよ」
「失恋でもしたの？」
「俺に好きな人が出来たことあったか？」
「ないねぇ」
「だろ？」
「……でも、気になってる人はいるでしょ？」
大ちゃんが恐る恐る聞いてくる。
……あいつは、そんなんじゃない。
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作者名：柊 | 作成日時：2018年10月12日 19時
