mission 20 ページ20
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「どう、してって……言われても」
またあのボロビルから飛び降りようとしていたなんて言えるわけねぇし。
「聞こうとして、結局聞きそびれたんだよ。それに、あいつが聞いてこいって……」
「え？」
「いや、なんでもない」
語尾の弱くなった薮の口調に戸惑う俺。
誰だよ、“あいつ”って。
「で、どうなんだ」
「……」
「今言わないなら、面談で聞くぞ」
なんだよ、その脅し。
伊野ちゃんにバレるくらいならいっそのことここで言ってしまおうかとも考えたけれど。
そんな薮の画策に乗るわけにはいかない。
「……死にたい、と、俺も思ったことがある」
「……は？」
「死にたい、って思って、何度も死のうとした」
薮は一言一言、言葉を選んで発していた。
それがなんだか同じだと思った。
あの日、ホストクラブで薮を見つけた時と同じように。
「怖かった。あの時は、人が怖かった。だから、殺される前に死のうとした」
「……薮？」
「でも止めてくれる仲間がいた。お前にもいるだろ？八乙女にも」
決して他には見せない顔で、ふと微笑んで、
それから──
「おわっ」
「だから生きろ。な？」
それから、机越しに、頭を撫でられた。
「ほら、帰った帰った」
「呼んだのお前だろ！？」
「八乙女が着いて来ただけだろ」←
「はあ！？」
ちっさいことで口論になっていると、なにやら廊下から足音が聞こえてきた。
「なぁ……嫌な予感がすんだけど」
「あぁ、俺もだ」
冷静に入口を見やる薮に腹が立ってきた。
「ど、どうすんだよ。ここ、生徒は立ち入り禁止だろ」
「ここ隠れてろ」
机の下に潜らされたと同時、扉がガラガラッと開いた。
「薮先生。こんな所でなにを」
「ちょっと忘れ物を取りに」
「そうでしたか。この学校広いから、探すの苦労したでしょう？」
「ええ、まあ」
「おっとこんな時間。では私はこれで」
颯爽と去っていった先生に安堵しながら、机に潜らされたときの頭の痛みに薮を睨む。
「俺のお蔭で助かったな」
「偉そうに言うな。お前だって焦ってたろ」
「どうだか」
惚ける薮が頭に来る。
「ま、静かにしていたご褒美ってことで」
机の端に手を置き、机の下の俺を覗いた薮。
そのまましゃがみ込んで、俺の顎に手を伸ばした。
一瞬にして引き寄せられた顔。
反射的に目を瞑った。
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そして、唇に触れた。
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作者名：柊 | 作成日時：2018年10月12日 19時
