102.路地裏 ページ4
間一髪ナイフで相手のそれを防ぎ、顔面目掛けて蹴りを繰り出すと、男は身を反らせて避けた。手練だと思いつつ、足を戻すと同時に後ろに跳び退りながら交わっていた刃を逸らす。
「……」
『……Aちゃん？』
ロボロさんの声に、反応する余裕はなかった。
誰だなんて、聞いたところで答えるわけが無いのだから無駄だ。睨み合って数秒、男が再度刃を構えて斬りかかってくる。今度は両手に握られたそればかりに意識がいかないよう気をつけながら右手の刃を避け、相手の懐に入り込む。正確に鳩尾を殴りつけ、脇腹を斬ろうとしていたナイフを逆手に持ったそれで弾いて、そのまま背後に回る。一瞬よろめいた男が体勢を立て直す前に腕をひねりあげ、そのまま捻り込む。嫌な音が男の体内から響いて、呻き声が聞こえた。一瞬力が抜けた男を屋敷の監視と同様に絞め落とし、地面に引き倒す。携帯させられている拘束具で両腕両足を拘束しながらインカムに話しかけた。
「すみません、合流地点から左に入った路地で襲われました」
『ちょっ、大丈夫なん！？』
「私は無傷です、捕縛しましたが、このまま連れて帰りますか？」
『……せやな、うん、連れてきて』
「了解です」
一旦通信を切って、スパルタクスさん宛に切り替える。
『……はい、何か？』
「そこから五十メートル程先、左手の路地裏にて不審人物……どこかの観光客かもしれませんが、捕縛したので連れて帰れとのことです。車をこちらに寄せていただいても？」
『！ 了解しました』
エンジン音が近づいてきて、右側で止まる。後部座席から一人の兵士が降りてきて、男を抱えた。
「目を覚まして自死でもされたら困るから、猿轡か何かしておきたいんですけど……タオルとかありますか？｣
「あ、はい！ 自分がやります！」
助手席に乗り込みながらそう告げると、後部座席の反対にいた兵士が勢いづいた返事をした。後は彼に任せようと思いながら、何とはなしに運転席のスパルタクスさんを見遣ると、彼は片眉を上げていて。
「……殺さないのですね」
「え」
「コネシマ様は、刃を向けてきた相手が手練であれば大抵殺してしまわれます。自分は兎も角、周囲も危ないから、と。あなたは、殺さないのですか」
忌避感。
この場から逃げ出したいと、そう不意に思ったことに自分でも驚く。何も、きっと何も逃げるようなことなどないはずなのに。
「……情報が手に入るに越したことはないでしょうから」
いつの間にか、酷く喉が乾いていた。
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たむ(プロフ) - 今回で何回めでしょうか。ふと、この作品を読み返したくなり、読み終わると共に更新がされず時が過ぎていくのを寂しく思います。陽乃様の御健康を一番に祈りますがまた更新がされるのを気長に祈ることをお許しいただけると幸いです。長文失礼いたしました。 (8月23日 0時) (
レス) @page33 id: eba900a9f0 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ひよこさん» コメントありがとうございます。キャラクター像や物語の軸が揺らがないように気をつけているので、お言葉とても嬉しいです。こちらこそ拙い作品と返信になりますが、のんびり頑張りますのでよければお付き合いください。 (2020年7月27日 8時) (レス) id: 612ba65c82 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - コメント失礼致します。占いツクールは設定や言動がガバガバなものが多いという偏見を持っていたのですが、この作品は全てにおいて素晴らしいなと感じました。物語に惹き込まれ、一気読みしてしまいました。拙い感想文で申し訳ございません。今後も応援しています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 4949800785 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ぴさん» コメントありがとうございます。言葉選びはかなり気を遣うので、そう仰っていただけると報われた気持ちです。コメントは気力に直結する部分もあるので、本当に有難く思いつつ返信しています。お気遣い本当にありがとうございます、私のペースで頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 暁レイさん» コメントありがとうございます、なかなか軸からブレないよう書くのは難しいもので、苦労する部分もあるのでとても嬉しいです。引き続きのんびりと頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年6月2日 20時
