105.廊下 ページ7
昼食を済ませばやることも無くなってしまった。射撃場にでも行こうかと考えながら廊下を歩いていると、ばたばたと向こう側から足音が近づいてくる。端に避けて立ち止まると、曲がり角の向こうから現れたのはシャオロンさんとコネシマさん、そしてショッピさんだった。
「待てやクソ先輩！」
「ちゃうねん！！ ショッピくんすまんて！！」
「何もちゃうくないやろ！！」
「何で俺巻き込まれなあかんの！？」
「シャオさんも笑っとったん見えてましたから！」
見ればナイフを構えるショッピさんの上半身は濡れていて、それと胸ポケットから覗くひしゃげた煙草の箱が、恐らく彼が怒っている原因なのだろうと察することが出来た。偶然水でもぶちまけたのか、はたまた悪戯か。
「あ、A！」
「すまん隠れさせてや！」
「え、わっ」
前を通り過ぎるだろうと思っていれば、こちらを目に留めたコネシマさんとシャオロンさんが私の肩を掴んで背に隠れ、振り向けばショッピさんが目の前に立っている。
「A」
「はい」
「どいて」
「どきたいのは山々なんですが、肩掴まれてるのでどうにも……」
ショッピさんが右に動けば私も右を向かされ、左に動けば左を向かされる。ちっと一つ舌打ちを零したショッピさんは、何を思ったかこちらに手を伸ばし、ぐいと私を抱き寄せた。
いきなり詰められた距離と、ブラウスの薄い生地越しに伝わる手と服の冷たさに肩が跳ねる。
「っ」
「すまん、後からまた謝らして！」
驚いたのも束の間、彼は既に二人に飛びかかっており、中腰だった彼らは悲鳴を上げて転びながら逃げ惑う。その背が遠くなっていくのを見送って、私は自分の身につけているブラウスを見下ろした。若干湿ってはいるものの、透けたり下着まで濡れたりということはないので、さして急いで部屋に戻る必要も無さそうだ。
「……A」
「はい」
呼ばれて顔を上げると、兄さんが少し前に立っていた。歩み寄ってきた彼は、遠い三人の背をちらりと見遣ってからぽんと私の肩を叩く。
「濡れたやろ、はよ着替え」
「……兄様こそ濡れていらっしゃいますが」
「俺もさっき巻き込まれたからな」
よく見れば彼はショッピさんに負けず劣らずびしょ濡れで、鬱陶しそうに髪を掻き上げる姿がいやに様になっていた。その頬に滴る水の粒から目を逸らし、ポケットから出したハンカチを彼に差し出す。
「よければ、どうぞ」
「……拭いて」
「え」
ん、と背を屈められて、思わず固まる。
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たむ(プロフ) - 今回で何回めでしょうか。ふと、この作品を読み返したくなり、読み終わると共に更新がされず時が過ぎていくのを寂しく思います。陽乃様の御健康を一番に祈りますがまた更新がされるのを気長に祈ることをお許しいただけると幸いです。長文失礼いたしました。 (8月23日 0時) (
レス) @page33 id: eba900a9f0 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ひよこさん» コメントありがとうございます。キャラクター像や物語の軸が揺らがないように気をつけているので、お言葉とても嬉しいです。こちらこそ拙い作品と返信になりますが、のんびり頑張りますのでよければお付き合いください。 (2020年7月27日 8時) (レス) id: 612ba65c82 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - コメント失礼致します。占いツクールは設定や言動がガバガバなものが多いという偏見を持っていたのですが、この作品は全てにおいて素晴らしいなと感じました。物語に惹き込まれ、一気読みしてしまいました。拙い感想文で申し訳ございません。今後も応援しています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 4949800785 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - ぴさん» コメントありがとうございます。言葉選びはかなり気を遣うので、そう仰っていただけると報われた気持ちです。コメントは気力に直結する部分もあるので、本当に有難く思いつつ返信しています。お気遣い本当にありがとうございます、私のペースで頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 暁レイさん» コメントありがとうございます、なかなか軸からブレないよう書くのは難しいもので、苦労する部分もあるのでとても嬉しいです。引き続きのんびりと頑張ります。 (2020年6月13日 9時) (レス) id: 0fb3ccf51e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年6月2日 20時
