46.車内 ページ46
「あいつ俺の隊におってんから、一般兵士言うたってそこそこ強い方やったと思うで？ ペン先ノックして腕時計のスイッチ入れるより楽か？」
「機械より、ナイフの扱いの方が慣れているもので」
笑い混じりに為された問いかけにも正直に返す。
「監視、誰やったと思う？」
「コネシマ様ですかね」
「なんでや」
「一般兵士でもない人間の足にされる幹部がいらっしゃるとは思えませんので」
「ま、それもそうやな」
というか、正直に言えば隠す気もない気配が着いてきていることくらい最初から気づいていたし、更にいえば性格からして彼が宛てがわれるだろうと思っていた。
「コネシマ様とロボロ様でしたら、総統閣下も御安心でしょうし」
「……どういう意味や」
「私益より公益を優先することが出来るのは、一種の才能ですから」
要は、心を捨てて利益を求めることが出来る二人だからだ。私が軍の利にならなければ、彼らは容赦なく切り捨てるだろう。
それが、最善だ。
そういえば前世でも心無いって言われてたな、と思いながら、私は基地へ続く石畳の振動を感じ続けた。
「おめでとう、A」
朝から総統室に呼び出され、扉を開けば基地にいる幹部全員が揃っていた。思わず一歩足を退いてしまいそうになるのを堪えてグルッペンさんの前に立つと、相変わらずの悪どい笑みを浮かべた彼がそう言った。
「今日付けで、お前は幹部に昇格だ」
「……拝命致しました」
「次の式典で改めてお前を国民に紹介しよう、安心しろ、オスマンがゾム共々別人に仕立て上げてくれるからな」
「任せてー」
「人を束ね、率いることは苦手か？」
「……そうですね、如何せんきちんと組織に属したことがないもので」
「そうか、ならば当分は昨日のような暗殺任務と幹部との訓練、それと書類仕事の手解きだな……エーミール、頼めるか」
「お任せください、よろしくお願いしますね、Aさん」
「こちらこそ、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
にこりと微笑むエーミールさんに頭を下げる。識字や計算に関しては問題ないはずだ、迷惑にならないよう出来る限り早く覚えよう。
「それと、一人紹介したい者がいてな」
入れ、とグルッペンさんが扉に呼びかける。
重い音をたてて開いたそこには、あの日より少し大人びた涼やかな顔つきをして、菫色のストールを巻いた彼が立っていた。
彼はちらりとこちらを見て、どこか安心したように微笑んで口を開く。
「久しぶりやな、α国のお嬢ちゃん」
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
