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がちゃりと扉を開くと、背の高い男性がそこに立っていた。こちらを見下ろす動きに合わせて、神と書かれた雑面がふわりと揺れ、笑みを形どった口元が見える。
立ち絵通りだ、というのは流石に、存在するこの人に対して失礼だろうか。
「さっきはごめんね、顔合わせに間に合わなくて」
「いえ、いきなりのことでしたので……どうかお気になさらず」
「ありがと、自己紹介しに来たんだけど、今大丈夫？」
「はい、立ち話も何ですからどうぞ、散らかっていて申し訳ないんですが」
といっても、段ボールが幾つか積み上がっているだけなのだが。元から置いてあった二人がけのテーブルにつくと、へらりと笑った彼が口を開いた。
「俺はしんぺい神、一応軍医やってて、大抵は医務室にいるから怪我したらすぐおいでね」
「ご丁寧にありがとうございます、私はAと申します」
「経歴はグルッペンから聞いてるよ、Aちゃんも大変なやつに目つけられちゃったね」
「いえ、光栄な限りですよ」
面白いと思ってもらえなかったら多分拷問の末に死んでただろうし、と思っていれば、しんぺい神さんがじっと私の手を見ている気がして、少し首を傾げた。
何かあっただろうか。
「……これ、引っ掻いたの？」
すっと伸びてきた手に、一瞬体が震える。隠し持っているナイフに手が伸びそうになるのを押し止めれば、手首を柔らかく掴まれ、テーブルの上に乗せられた。
「……虫刺されですかね、痒くって」
「血出たでしょこれ、今も痒い？」
「いえ、大丈夫です」
ごつごつとした手が、他意のない動きで服の袖を捲る。敵意のない手つきで触れられたのは随分と久しぶりな気がしてぼんやりとそれを見つめ、一拍置いて、あ、と小さく声が漏れた。
「……Aちゃん」
「は、い」
「医務室、行こうか」
右腕の、肘と手首の中間あたり。それは、ちょうど五日前の依頼の最中に銃弾を受け、包帯を巻いていた箇所だった。先程触れたせいか、薄く血が滲んでいる。
傷に触れないように気を使いながら、けれど先程より強く、しんぺい神さんの手が私の手首を握る。
立ち上がった彼について行く以外の選択肢を見つけられず、手を引かれるままそれに倣った。雑面の下の表情は、当然だけれど見えはしなかった。
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
