39.総統室 ページ39
説得も虚しく、手を掴まれたまま廊下を駆けて辿り着いた先は総統室だった。ノックもそこそこにゾムさんが扉を開け放ち、閉める間もなく机に向かっていたグルッペンさんとトントンさんの前に連れられる。
顔を顰めたトントンさんが、私を見て少し申し訳なさそうな表情になった。こういうのはよくあることなのかもしれない、なんて現実逃避がてら考える。
「な、な、演練場使わしてや！」
「それ、今じゃないとあかんの？」
「だってA、俺が部屋に忍び込んだんすぐ気づいたんやで！？ シッマたちより早かったんやで、手合わせしな気になって眠られへんもん！」
「いやゾムさん何してんの！？ 気になるからって女の子の部屋に勝手に忍び込むんはあかんやろ、ちゃんと謝り！」
「Aごめんな！」
素直か。
気にしてませんから、と苦笑すると、ゾムさんはにっと笑うが早いかグルッペンさんを振り返って再度捲し立てる。
「なあグルッペンも言うてや、気になるやんか！」
「Aは明日も仕事なんやから寝かしたり、その格好やったらまだ風呂も入ってへんねやろ」
「あ、はい、まあ……」
「まあトントン、ゾムの言うこともわからなくはないだろう」
「……仮に演練場使わしてもアンタは見学出来ひんからな」
「なぜだ！？」
「仕事終わってへんやろ」
縋るような目でこちらを見るゾムさんとグルッペンさんに思わず一歩後退るも、未だ手首は捕らえられたままだ。それ以上何も出来ずにいると、トントンさんが一つ溜息を吐いた。
「……A」
「はい」
「……五分だけ、相手したってくれんか」
「わかりました」
「すまんな、……グルさんも、終わったらすぐ戻るんやからな」
「うむ！」
「お、俺もういけるけど、Aは？」
「大丈夫ですけど、使う武器とかどうされます？」
「ほんまに怪我したらあかんし、訓練用のゴムナイフ2本でええんちゃう？」
ゴムでも殺傷力がありそうだな、なんて思いながら手を引かれて階段を駆け下り、演練場へ連れられる。そんなに急がなくても逃げやしないのに。後ろから優雅に降りてくるグルッペンさんが小憎らしい。
武器庫に着くなりがらがらとシャッターを持ち上げたゾムさんは、ものの数秒でゴムナイフを持って出てきた。
「ん」
「ありがとうございます」
放られた二本のそれを宙で掴み、何度か握り直して感触を確かめる。ゴムとはいえそれなりに硬い材質のものらしい、使いようによっては傷くらいはつけられるだろう。
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陽乃(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます、黒猫様の御趣味に添えられたようで嬉しい限りです。続編ものんびり書いておりますので、楽しんでいただければ幸いです。 (2020年5月29日 16時) (
レス) id: 89afdb7f98 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 全て見させていただきました。俺はこういう作品が好きなので、とてもいい気持ちになりながら見ていました。神作品をありがとうございます。 (2020年5月21日 10時) (レス) id: 0779f5a88d (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - （名前）さん» コメントありがとうございます。建物の設定は実在する基地や城塞、そして仰る通り大脱走など御本人たちの動画を参考にした部分もありますね。気づいてくださって嬉しいです。 (2020年4月12日 21時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - 9の途中まで見ました〜なんかPX、商店、、かな？みた途端、大脱走元にしてるんかなって思ったーーー！！実際どうですか？本当に大脱出が元だったら、、違うくても、話の作り方、うますぎる… (2020年4月12日 19時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
陽乃(プロフ) - 黒胡椒さん» コメントありがとうございます、のんびり更新していきますのでよければお付き合いください。 (2020年4月4日 3時) (レス) id: 4760b364cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽乃 | 作成日時：2020年3月16日 17時
