【文スト】白虎の片割れ。【中島敦】

Episode.31 - Affection ページ33

A Age.15

鏡花 Age.11ー



「母様、これは…？」



母様が、渡す物があると言って、私に、“ある物”を渡した。



「貴女の携帯電話です。
大切に、持っていなさい。絶対に、手放してはいけません」



母様の目は、とても真面目で、真っ直ぐだった。



「…うん、分かった」







手のひらの上で、携帯電話は艶光っている。
今にも着信音が鳴りそうだった。









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少し、息苦しい。



季節の変わり目は喘息の発作が出やすいから気をつけろ、とお医者さんが言っていた事を思い出した。



「姉様、大丈夫？…苦しく、ない？」



縁側にいた私の隣に、鏡花はちょこんと座る。



「…あ、鏡花。大丈夫。心配してくれて、ありがとう」



そう言い、私は発作の薬を飲んだ。









「…鏡花、身長、伸びたね。段々、大人っぽくなってる」


「…ありがとう。いきなりどうしたの？」



「鏡花が益々(ますます)美人になっていくな、って思って…」



私がそう言うと、鏡花は顔を少し赤らめた。



「…姉様も、美人。それに、姉様は私の憧れの人、だから」



「憧れの、人？…私の、事？」



「うん」



憧れの人、だなんて。
鏡花がこんな事言うなんて、意外。もう、吃驚しちゃうよ。







「ありがとう、鏡花。鏡花は私の自慢の妹だから。…大好き」



「…うん。私も、姉様が大好き」








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私たちの隣を、涼しげな風は通って行った。
発作の息苦しさは何処かへ消えていた。







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Affection=愛情

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