【Dr.X】入院生活も案外悪くない

カルテ１３ ページ14

『博美センセーもフリーランス？！』

「そ。大門先生といっしょ」

正確には神原名医紹介所で雇われてるんだけどね

そう言いながらにこりと微笑む城之内博美先生はこれまた美人なのであった


ここは院内に備え付けられたカフェ

ゆっくりと時間を過ごす患者さんの中でこんな美人な博美先生と話せるのはうれしいことだが、私はテーブルの上のアールグレイを目の前に動けないでいる

『…ほんとにいいの？』

「ん？なにが？」

『紅茶、奢ってもらっちゃって』

「当たり前、感謝の気持ちよ」


さっきはありがと、

博美先生はまた更ににこりと微笑む


ありがとう？
ってそれはもしかしなくてもさっきのトイレのアレだよね？
えっ、でもそれなら

『何もできなかったじゃん？』

飛び出すだけ飛び出して怖気付いた小心者ですはい

あそこで何か一言いえば多少ドヤ顔もできたものの、これじゃあドヤ顔なんて夢のまた夢


はぁ、と溜息をつく私を見て彼女はくすくすと笑い頬杖をつく



「それでも、あたしは嬉しかった」


『博美センセー…』

「ま、あたしじゃなくて大門先生を庇ったんだろうけど」

『ゔっ…、』


そう、私は大門先生が悪く言われているのを聞いて外に出たんです
だって知らなかったんだもん！博美先生とこれが初対面だもん！
今なら全力で庇いますともええ！

渋い顔が面白かったのか、またもくすくすと笑う博美先生
ちょっと笑いすぎじゃない？



「でもどうして庇ったの？」

急にいつものクールな表情にもどった彼女は不思議そうに首を傾げた

どうして、って言われてもねぇ
特にたいした理由なんてないというのが本音だ

言うならばただ大門先生自身を私が気に入ったから？
そんなところである

『お気に入りだから、という結論に達した』

「お気に入り？」

『んーていうかさ、大門先生って普通にいい人だと思うんだ』

噂してた二人が言うみたいに、患者さんのこと蔑ろにするような人じゃない
むしろ、一番に私たちのこと考えてくれてる人な気がする

だってほら、私が困ってるの見越して病室まで連れ帰ってくれたし
それだけじゃなくて、手術の前に体に異常がないか直接調べてくれたし

何も言わず脱がしてくるもんだから流石に驚いて病室飛び出したけど、まぁトイレ行きたかったのもあるから仕方ないよねー…

『あれ…まって』

そういえば私、トイレ出てから流れで博美先生と雑談してるわけですけど


…え、もしかして大門先生って病室で待ってたりするの？

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