アリス、ぶつける 01 ページ29
ふとAは思った｡
話をしようとは言ったものの､一体何を話せばよいのだろうかと｡互いに黙りこんでしまわないだろうかとも｡
沈黙を見越してAは口を開こうとした｡
｢Aがあの2人倒したの?｣
｢えっ……ああ､うん｡そう､だね｣
しかしながら先に口を開いたのは､ツナの方だった｡あの2人とは拉致して売り飛ばす算段だったAにがっつりやられた例の2人だろう｡
唐突な問いかけにAは動揺しつつも答える｡かなりぎこちない返事だった｡
｢そっか｡A1人で､成人男性2人をこてんぱんにね……｣
｢……怒ってる?｣
小さな声でAは問う｡いつかツナに言われた“無理はするな”という言葉を､彼女はちゃんと覚えていたのだ｡
｢怒ってないよ｣
｢……ほんとに?｣
｢本当だよ｡心配はしたけどな｣
ツナは眉を下げてそう言った｡つい取り乱してしまうくらいには心配していたのだ｡
だけどもAはそれが腑に落ちなかったらしい｡
｢何で?何で心配したの?｣
本気で分からないという声色で彼女はこぼした｡
ツナはぶつけられた疑問に驚いて､ドアの方を振り返る｡当然ドアの向こう側にいるAの姿は見えないのだが｡
｢何でって､当たり前だろ｣
｢当たり前って何?だって私はタリアテッレに行くんだよ｡ツナさんとはもう関係ないじゃん｡ツナさんだって私のこと邪魔だから､何も言わなかったのに｣
平坦な感情を感じさせない話し方をするA｡ツナは彼女の言い分に思わず大声で返してしまった｡
｢そんなわけないだろ!何でそうなるんだ!｣
｢何ではAのセリフだよ!｣
それを超えるくらいの声量がドア越しで返ってきた｡言わずもがな､A本人の声だ｡
こんなに声を荒げる彼女を､ツナは一度だって見たことなかった｡まあ､今も実際には見ているわけでもないが｡
とにかく､ツナは彼女から出てきた言葉とすぐに理解できなかった｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年9月17日 21時
