アリス、隠す 01 ページ2
ツナの仕事部屋に控えめなノック音が聞こえる｡
｢10代目､失礼してもかまいませんか?｣
礼儀正しく入室を尋ねる相手に､ツナはそれを許可した｡
｢獄寺くん｡どうかした?｣
｢いえ､あの……Aがまだ戻ってこなくて｡何かご存じありませんか?｣
ツナは言葉に詰まってしまった｡
Aは色々あって倒れたため､今は医務室にいる｡本当に､色々と形容するしかない出来事だったのだ｡
驚くべきことに､彼女が倒れたという噂はあっという間にボンゴレ本部内に知れわたった｡むしろ何で獄寺は知らないのか｡
とまあ考えてみたところで､彼は今日非番だったことを思い出した｡知らなくて当たり前である｡
｢Aなら医務室で休んでるよ｡あの様子じゃ多分しばらく目を覚まさないと思う｣
｢ええっ!?アイツ､今日は何やらかして……!｣
やれやれといった具合に獄寺はため息をつく｡呆れたように額に手を当てた｡
｢ったく､Aの奴……また10代目に心配かけさせやがって｣
忌々しそうに獄寺が吐いたその言葉に､ツナはピクリと眉を動かした｡
心配｡
ツナは思った｡
自分は今日､Aのことを一瞬でも心配しただろうか?
心配していないはずがないのだが､彼の頭はすでに余裕がなくよく分からなくなってしまっていた。
自分のことで手一杯で､本当なら一番考えなくちゃいけない彼女の存在を疎かにしてはいなかったか?
呆然として黙りこんだツナを怪訝に思ったのか､獄寺は彼を覗きこんだ｡
｢10代目､大丈夫ですか?体調が優れないようなら､今日はもうお休みになった方がよいのでは｣
｢ありがとう､大丈夫だよ｡……でもそうだね｡キリもいいし､今日は終わりにしようかな｣
机の上をざっと片付けると､ツナは足早に獄寺の横を通り過ぎていった｡
｢10代目……?｣
感じた違和感に首をかしげつつ､獄寺は思わずその肩書きを呟いたのだった｡
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作者名：futureblue�鏡� | 作者ホームページ：http:/
作成日時：2020年9月17日 21時
