喫茶アリエス (ページ5)

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まだかなぁ。

撮影は昼からだから時間はあるけど…。

そう思っているとAさんがお手洗から出てきた。

綺麗にまとめられたポニーテールと秋の初めに丁度いいオレンジベースのあっさりしたメイク。

ｷﾞｮﾝｽくんにへへって笑ってるけど白い目で見られてる。

コーヒーを持ってきてくれたAさんがさっきの事を気にしてそうだから勇気をだして

ﾐﾝｿｸ『さっき髪の毛おろしてるの、素敵でしたよ。』

と伝えてみた。

正直そんな自分に自信がある訳ではない。まだまだ未熟だけど、俺が褒めると大概女性は嬉しそうにするから。

きっと嬉しいよね…？

でもAさんは分かりやすく動揺してて、元から大きめの目をもっと見開いて顔を赤くしてた。

ホント、面白い子だよなぁ。可愛い。

ｷﾞｮﾝｽくんに頂いたモーニングセットはあんこがぎっしり詰まった小さな瓶がのったプレートにほどよく焼き目がかったトーストとゆで卵というなんとも簡素なものだけど、

本当に美味しいから来てるんだ。
美味しいから。

ｷﾞｮﾝｽくんの肩に手を置いてこっちにひょこっと顔を出すAさんが可愛いけど…。

その手…そこ置くかなぁ…。

芸能界の物好きな女の子はたまに俺を嫉妬させる為にあれこれしてくるけど

ｷﾞｮﾝｽくんもなんてことないように手をどかしてカウンターに戻っていくし。

A「あっはっはっはっは！」

そんな事考えてるとAさんが口に手を添えながら豪快に笑ってた。
彼女の笑いは俺も幸せにする。そんな笑い方だ。

よし。

ﾐﾝｿｸ『あの、Aさん…』

A『すみません、すぐ戻りますので』

ｷﾞｮﾝｽくんとの事を聞こうと顔をあげたらいなくなってしまった。しかもすごいスピード。

な、何事？

俺がｼｳﾐﾝなのわかってるのかな。

寂しい様な、でも他の女の子と違って媚びない所が心地いいと思った。

ｷﾞｮﾝｽ『気にしないでいいから、その子よろしくね。』

トーストをかじりながら考える。

俺がこのお店を訪れたのはきっと100回はあるけど、その中でも20回はこうやって迷子を助けたり、窓から見えるお年寄りの大量の荷物を運んだり。

Aさんは、優しいよなぁ。もし付き合ったら…

なんて漠然と考えている自分に驚いた。

いやいやいや今はファンを第一にすべきだろ。うん。

ｷﾞｮﾝｽ『あ、A。』

ｺﾞﾎｯ