03/笑えねぇ冗談 ページ4
*
飛び出してしまったものの、俺は少し。 いや、大分緊張していた。
自分に家庭環境が似ていたから、放っておいていられなかったというのももちろんある。
でももう一つ。
血のつながっている人間が一人しかいないのに、その人間に傷つけられているなんて報われないじゃないか。
*
小さなマンション、数字を打ち込みコールが鳴る。
三度、四度と続いたところで、ガチャリと電話が持ち上げられた音がした。
『…どちらさまですか?』
透明で透き通った声。中世的な声色で、男女の区別がつかない。
「仁科さんの見舞いにきました
三年の土方です」
むず痒い、自分らしくない敬語を使って、それから沈黙。
相手側から何も言ってこない状態が数秒続く。
『……妹は今出かけているんだ』
その声の主が、仁科ではないことがわかった。
先ほどとは打って変わって、静かに、でも迫力のある声をしている。
「そうなんですか。病院に、ですかね?」
『……そうだよ。 …母と今さっき出て行った。タイミングが悪かったみたいだね』
「そうか、てっきり家に居るのかと……。 じゃあ、お大事にと伝えて下さい」
『ありがとう。 必ず伝えておくよ』
プツッと通話が切れた。
マンションに入るためには、俺の目の前の自動ドアを中側から開けて貰わないといけない。
だから今日は、帰るほか選択肢が無い。
「クソッ…」
……一番悪い俺の予感が、まさか的中するとは。
兄は母と出かけたと言っていたが、仁科の親は双方とも亡くなっている筈だ。
仁科は実の兄に、何かしらの危害を加えられている。
その線が色濃く浮上した今、俺は憤りを覚えた。
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月詠 - めっちゃいいです十四郎に抱きしめられたァァァァァァァァ有難うございます作者さんこれで明日も野球部のマネ頑張れます (2014年12月28日 2時) (レス) id: 42747b28bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はちか | 作成日時:2014年8月17日 1時