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……
彼女の墓、とは言ったが、正確に言えばあれは審神者達の墓だ。永久の眠りについた英雄達が静かで居られるようにと墓は山の麓に作られた。
無機質な白い建物、その中には専用の端末が置いてあって、そこに名前を入れれば自動的に目的地まで案内してくれる、なんていう随分近代的なシステムがある。墓というよりは小さな冷凍室のようなコフィンだと思った。
「お久しぶりですね」
花を生ける花瓶もない、それどころか線香の香りすらしないこの空間のどこが墓なのかと首を傾げるが、まあそんなことはどうでも良かった。
「元気にしてましたか？ ……いや、こんなことを言うのはおかしいか。ええと、私、貴女の探し物、見つけられたような気がするんです」
コフィンの中は空っぽだった。当然と言ってしまえば当然だった。だってその肉体は私自身の身体だったから。
＿＿誰に言っているのか、一体何を言っているのか。
塵ひとつない部屋にいると精神的に不安定になりそうだ。
「鶴丸国永って、ひと。あれは何だったんですか」
尋ねても返事はない。あるわけもなかった。私はそこにいるであろう魂に向かって話し続ける。
「あのひと、私を見た時にあなたの名前を口にしたんです。……いや、これは私の名前でもあるけれど」
私以外の温度が感じられない。酷く静かで寂しい場所。ここに彼女は、彼らは安置されているというのだから、おかしな話だ。
「見たことのない眼をしていました。まるで、＿＿」
恋をしているみたいだった、そう言葉を紡ごうとしたのに、何故か声が出なかった。
瞬時に器が拒絶しているのだとわかって、やはりそうなのかと納得する。
貴女は、貴女と彼は、そういう関係だったのか、と。
「…………へんなの」
率直な感想が口から漏れた。
……
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作者名：木浪 | 作成日時：2020年4月21日 15時
