擬似恋愛【鶴丸国永】 (ページ10)

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「貴女は鶴丸国永をどうしたいの」
『…………私は＿＿私は、そうね』

声が、聴こえた。コフィンの上部、沈黙していた音声装置が起動している。チカチカと点滅する画面にやがて波線が現れ、声と共に揺れ動いた。

『鶴丸は私に干渉すべきではないと思うの』
「干渉？」
『つまり、あなたと関わるべきじゃないってこと』
「じゃあ、貴女は彼の想いを全て切り捨てるってことですか」
『結果的にそうなるわね。でもそれは決して悪いことじゃないはずよ』
「どうして」
『私は器、あなたは魂。別々のものが一個体(ヒト)を作っているんだから、そこに不具合(バグ)なんて起こったらどうなると思う？』
「…………魂は弾き出され、もう人ではなくなる」
『ええ。若しくは器にヒビが入るかもしれない。或いは、両方の消失』
「それでいいんですか、貴女は」
『逆に訊くけれど、あなたは生きたくはないの？』
「どうして話を逸らそうとするの」
『これは私の話でありあなたの話でもあるのよ』
「埒が明かないですね。
…………貴女の心は彼に逢いたがっているのに」
『それでも、あなたを殺すわけにはいかないもの』
「随分と優しいんですね。身体を奪った女に対して」
『あら、感謝すらしているわよ、貴女にはね』

探し物はちゃんと見つかったし、と音声ファイル(彼女)は言った。人工知能か何かだろうか、私はその辺には疎いのでよく分からないけれど。

……