擬似恋愛【鶴丸国永】 (ページ2)

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「そこ、立ち入り禁止だよ」
「あぁ、知っている」
「二年のクラスはこの階の一つ下だし、きみも知ってるでしょ？」
「そうなのか？それは知らなかった。俺はこの学校に来るのはこれが二回目でなぁ」
「じゃあ今覚えて。どうせあと一年はここから出られないんだから、そのくらいできるよ」
「なぜ覚える必要がある？」
「生きるために必要だから」
「……そうか、きみが言うなら間違いないな」

学年別の上履きの色で彼が私と同じ二年生であることはわかってはいたものの、彼の容姿は私の記憶にはなく、少し戸惑ってしまう。

人は生きるために必要なことは忘れないんだよ。
もう一度口に出して噛み締める。これは彼のためというより、私のための言葉だ。

「さっきここに来るの二回目って言ってたけど」
「身体を壊して被験体にされた」
「あぁ、モルモット」
「名誉の被験体をネズミ呼ばわりかい、きみ」

四月とはいえ、コンクリート製の建物は肌寒い。日差しもまだ他人のように私に冷たくて、情がないと言いたくなった。

私の言葉にも、彼は特段傷ついた様子は見せていない。それどころか、おかしそうにくつくつと喉を鳴らして笑っている。ただ、彼はそれきり口を開かず、自分のことについて語らなかった。

……