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*
恐る恐る、後ろを振り向く。
そこには全身黒い衣装に身を包み、頑丈そうなマスクをはめた男の人。
視線が、交差する。
どなたですか、そう発しようとした時。
「Say my name.
……名前、ヲ呼ンデ。」
恐らく彼のものであろう高めの声が、酷く機械的に発された。
それにしても彼の名前?知っている訳がない。
「……あなたのお名前は?」
「俺ノ、名前ハウ────ッ!?」
彼が名前を口にしようとしたであろう瞬間、その声は空気を切り裂くような大きな叫び声に変わった。まるで人のものとは思えない、いや、この世の音とは思えないような、劈く様な叫び声。
空気をびりびりと震わせながら彼は喉付近を押さえ足から崩れ落ちる。
獣のように喉から荒く呼吸を繰り返しながら彼は小さくここから出してと呟き、思わず駆け寄った私に拳を押し付けた。
そこから零れ落ちたのは、見覚えのあるタグの切れ端。斜めに千切られているせいで少し文字は切れているが恐らくこれは『OSANG』だ。
「これはあなたのものですか?」
先程言いかけた『ウ』が彼の名前でこのタグも彼のものなら、タグの前に『WO』を補うとウサンという名前になる。しかし彼は首を横に振った。彼のものではないということは、他のメンバーのものであるということ。
「あぁ、こんなとこにいたのか。
探したよ。」
なぜタグはこのように千切られているのか、頭を回そうとしたとき酷く懐かしい声が聞こえた。反射的にタグを手に握りこみ、振り向こうとした瞬間、黒服の彼が乱暴に私を遠くへ突き飛ばす。
ちょっと、と文句を言おうと目をやったら丁度彼の腹付近に鋭い蹴りが撃ち込まれていた。
蹴ったのは他でもない──私の兄、懐かしい声の持ち主そのもの。
しかし……彼はこんな目の色をしていただろうか。
「イェ――」
「あぁ、それ以上は言っちゃいけないよ。
さ、こんな所に長居しない方がいい。こいつ等みたいに名前を呼ばれないと出られなくなっちゃうからね。」
僕が送ってあげよう、と私の目を塞ぐ実兄イェジュニオッパ。これは私が昔、夢見が悪い時に能力で幻を見せてもらっていたそれだ。この後能力を使われるのは分かるし、彼が私の知っている本来の彼かも分からない。つまり、そうやすやすと身を預けるわけにはいかないんだ。
自分の体だけに無効化を発動する。
その瞬間、ずっと開けていたはずの目が『開いた』。薄暗い廊下でドアを背に私は座っていた。
見覚えがある。
背のドアを開けると、散らかった書斎と彼。
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Tie(プロフ) - 初めまして。ateez目的で読み始めましたが、(地球滅亡の方と共に)とても好みの作品で1作目から何周もしています。もう更新されることは無いかもしれませんが、こんなに面白い作品を作ってくださりありがとうございました。楽しく読ませて頂きました。 (2022年9月3日 17時) (レス) id: 031775e238 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - かまみのさん» 初めまして、お褒めの言葉をありがとうございます。更新やレスポンスにお時間が開いてしまいすみません。本編終了後にはもっとじっくり彼らとの小話も書いていきたいですね……!コメントありがとうございました! (2020年10月10日 21時) (レス) id: 2ace97a462 (このIDを非表示/違反報告)
かまみの(プロフ) - めっちゃ面白い!NCT好きだから出てきて嬉しい (2020年9月2日 23時) (レス) id: 30d38f5d7d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - オンマさん» 初めまして、温かいコメントをありがとうございます!最近忙しくて、前のように頻繁に更新できるかは分かりませんが頑張りますね!私もハマっているので同じ趣味の方がいらっしゃって嬉しいです^^ (2020年5月7日 1時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
オンマ(プロフ) - はじめまして。 この話を見つけてイッキ読みしました^^ のめり込んでいます。 面白い。 頑張ってください。 私は、ATEEZにハマっています。 (2020年5月6日 21時) (レス) id: 51e1e6ee34 (このIDを非表示/違反報告)
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