ー０４° ページ19
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迅が遠征部隊を待ち伏せていたのは 近界民である空閑の黒トリガーが奪取される未来を阻止するためだ。
空閑から話を聞いた。父親、だそうな。父親が命を懸けてまでしてもタイムリミットが付与されてしまった幼い人生には、少しでも色のついた楽しい時間の中で生きていてほしい。一秒でも永く。出会ったとき どことなく感じられた無色の空虚感はかつて迅も抱えていた。
これからは毎日が楽しくて仕方ないほど戦友たちと遊び倒すのだ。毎日が足りないほどに。それはかえって酷なことになるだろうか。しかし 空閑は昔の迅に似ている。生きるのが楽しいこと、これ以上に素晴らしいものはない。
そんな願いのもと 本部との摩擦を軽減すべく太刀川たちのトリオン切れを狙った策が風間に看破される可能性も迅は予知していた。比較的確率は低い未来だったが対策はある。
「……ん？」
しかし 迅にとって余裕を持てないが冷静さは欠片も落とすことのなかったこの乱戦に一粒子の可能性すら存在しなかった未来が不意を衝いてきた。
不審に空を仰いだ太刀川が迅を呼ぶ。
「おい迅。お前 連れてきたのは嵐山んとこだけじゃねえな。誰だ今のバイパー」
「いや〜そう思うよね。予定外のプランCが来たっぽい」
戦場はガレージから通学路へと移る。三人の緊急脱出──順に 古寺 奈良坂 歌川。歌川が供給機関めがけて空撃されたのを目にした迅は、嵐山隊ではない人物がその三人を退場させたと判断する。思い浮かんだ実行犯に迅は「ああやっぱりね」と腑に落ちた。
「距離は400らしい。玉狛の方向だ。…………成海か？」
「400？ マジか、三輪隊の狙撃手も緊急脱出だとよ」
対面する風間と太刀川も戸惑いつつ戦況を把握する。風間の予想通り正体はAで間違いない。だが Aは支部にいるはず。騒ぎを察知する誘因も未来もなかったはずだった。今日のことを少しも伝えてだっていない。
突然視えてしまったようだ。読み逃した未来の原因を探り当てた後、迅はブレードを補填した風刃に握力を込める。鋭さの変わらない眼差しは再び前方に当てられた。
「お前の秘蔵っ子なあ。なんだ 飛び入り参加か？」
「だろうね太刀川さん、招待した覚えないし。けど正真正銘1対2で暴れられるようにっていう配慮を感じるだろ？」
面白い気配りのできる子だ。
ただしその気遣いは規定違反を犯してまで必要とするものではない。
「まあ……説教はしとくよ」
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作者名：巡 | 作成日時：2021年1月24日 22時
