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しかし、その数秒後。傷口に異変が起きた。
(あ……)
 乱雑に作られた傷口が見る見る内に治っていくのだ。時間を戻す様に、一つ一つ丁寧に、傍から傷口なんて無かったかの様に修復されていく。5秒も立たない内に傷は全快し、引き千切れた皮膚も、酷い炎症も、剥き出された肉も消えて無くなっていた。残ったのは不可抗力で流れ出た血液のみ。
 青年はまるで魔法の様に治っていった傷口をじっくりと色んな角度から見ると、やがて嬉しそうに頰を緩めた。

「凄い……凄いです! これどんな仕組み何ですか!? まるで手品ですね! 思わず感動してしまいましたよ!」
「仕組みは分からない。でも、悪魔だから人間より回復力は高いと思う」
「ほうほう、人間と悪魔ではそもそものステータスが違いますか。やはり固定概念は取っ払って考えた方が良さそうですね!」
「信じてくれた?」
「信じるも何も、僕は初めから貴方に興味津々ですよ! 空を飛んだり、傷が治ったり……そう言えば、巨大植物の事もありましたね」
「そうだね。なら、此処から本題に入ろうか」

 拳を握ってブンブンと振りながら、未だ興奮冷めやらぬ青年に、デザインナイフの血を丁寧に拭き取って蓋をしながら男は苦笑し、再びベランダの手すりに腰を下ろす。青年はその隣に立つと、漸く外の景色に目を向けた。
 海は未だ月の光を受けて、波立つ水面をキラキラ輝かせる。
 「では、初めに巨大植物について話して下さい」と彼が促すと、男は言われた通りに話し始めた。

「あれは終焉の樹と言って、神が送り込んだ破滅の樹だよ」
「神が送り込んだとは、極めて現実味の無い話ですねぇ……それが真実だとして、何故神はそんな事を?」
「さぁね。でも、このままではいずれ終焉の樹は世界の全てを飲み込む。これが身勝手な神が選んだ人間の運命なんだよ」
「随分と酷い話ですね。では、その神と敵対するであろう悪魔である貴方が、人間に加担する理由はなんですか?」
「神の意志に背きし者。つまり、気に入らないんだよ。神は人の信仰無しには存在出来ないと言うのに、それを剰え消し去ろうとしてるんだから。かく言う俺達も人間無しには生きられない」
「ほう、相反する故にですか。実に分かりやすいです。では、最後に何故僕にその事を話したのですか?」
「……君なら、その運命を変えてくれる気がしたから」

 青年が男に視線を移すと、カッチリと目が合う。顔半分が月に照らされ、初めて逆光で出来た影越しではない男の顔を見る事が出来た。

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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年10月15日 20時

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