◆ストーリー ページ11
【ストーリー】
神の身勝手な意志により、一つの都市が消滅した。
それは日本の大部分の機能を担っていた首都・東京。しかし、今やその面影は無くなってしまった。
所狭しと並べられた夥しい量の高層ビルはチョークの様にボッキリ折られ、鉄骨や電線をだらし無く剥き出し、これでもかと言う程にカレットで固められたアスファルトはひび割れ粉々にされ、中身を掘り出されいた。その上を走っていた車や電車はスクラップとなり、無残な姿を晒しながら天高く積まれていく。
其処はかつて東京と呼ばれた廃墟。その場所に蔓延っていたのは、突如現れた得体の知れない巨大植物。今も尚、その巨大植物は勢力を拡大させており、街を飲み込み、人を喰らい、暴虐の限りを尽くしている。
それは地獄と呼ぶにはまだ生温く、戦場と呼ぶにはあまりに一方的な絶望の世界。例えるなら、“終焉”。東京はその言葉通り、死んだのだ。
そんな世界を映し出すタブレット型の携帯端末を、淡褐色の瞳を輝かせて見つめる青年が居た。
「命を喰らう巨大植物……なんて興味深いんでしょうか!」
月は夜空にぽっかりと浮かび、太陽の光を反射させながら、静かな夜の海を幻想的に照らしている。
此処は東京から離れた小さな港町。夜は波の音しか聞こえない静かな場所にある二階建ての木造建築のベランダで、自然の美しい景色には目もくれず、青年は潮の香りが漂う風に当たりながら画面の中にある世界に心を躍らせていた。
この植物は一体何処からやって来て、何故東京を襲ったのか、何を原動力にしているのか、どんな仕組みで動いているのか──考えれば考える程湧き水の様に溢れてくる純粋な疑問に、彼は思わず「東京へ行きたい」と呟いた。
「──叶えてあげようか? その願い」
独善的に吐いた言葉に、返事が帰って来た。
青年は携帯から目線を外し、真っ直ぐ海の方を見ると、目の前に腕を組みながら空中を浮遊する一人の男が現れた──そう、空中に浮遊した男である。
月を背負いながらふわふわと浮く男は美しく、瞳に宿す紫がとても印象的だった。しかし、その表情は逆光によって伺い知る事は出来ない。
(浮いてる……外国の人、ですかね?)
眼前の出来事を他人事の様に茫然と考える青年だったが、男がベランダの手すりに腰掛けた瞬間に我に帰り、身を強張らせながら後退る。しかし、ベランダの出入り口にある窓枠に躓き、彼は「うわぁぁあ!?」と大声を上げながら後方へと倒れた。
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作者名:十二月三十一日 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年10月15日 20時