step27 ページ27
Kentaro side
安井「今日はありがとう。嬉しかった。
それじゃあAちゃん、またね。」
偶然知り会っただけのAちゃんに、「またね」なんて言う日が来るとは。
次に会う約束とかは何もないけど。
きっと、俺達はまたどこかで会うだろうから。
そんな気がする。
『はい、またどこかで。』
Aちゃんも同じことを思っていたのか悪戯っぽく笑うと、綺麗な黒髪を靡かせながら改札の向こうへと消えていった。
何故かその笑顔が、声が、頭から離れなくて。
俺は暫く改札の前から動けなかった。
諸星「あっ、謙ちゃん!
Aちゃん、もう行っちゃった?」
そんな俺を現実に引き戻したのは、モロの声で。
安井「あれ、モロどうしたの?」
諸星「実は、Aちゃんが学生証忘れていっちゃったみたいで。」
ほら、とモロが出したのは、確かにAちゃんの学生証で。
……Aちゃん、意外と忘れ物多いよね。
諸星「無いと困るかなって思って、追いかけたんだけど間に合わなかったかぁ……。」
安井「……俺から届けとこうか?」
諸星「うん、じゃあよろしく。」
モロは学生証を俺に渡すと、じゃあ、店戻るかー、なんて言って歩き出した。
安井「ねえ、モロ。
変なこと言ってもいい?」
諸星「何、どーしたの笑」
俺の隣を歩いていたモロは、俺の言葉に足を止めた。
安井「俺さ。」
諸星「……うん。」
安井「……Aちゃんのこと、好きだわ。」
持っていた学生証をヒラヒラとさせながら何気なく言った、つもりだったのに。
諸星「いいよ、今思ってること全部言って。
で、店に戻る前に泣き止め!」
安井「えっ……俺………。」
気づいたら、泣いていた。
だっせぇな、俺。
26にもなって何泣いてんだろ。
そう思ってるのに、溢れた涙は止まらなくて。
安井「……でもさ、年離れてるじゃん?
高校生とアラサーだよ?釣り合う訳ないじゃん。」
諸星「そうかな?」
安井「そうだよ。
それに、Aちゃんにはながつっていうかっこいい幼なじみがいるし。ながつも、Aちゃんのこと好きみたいだし。」
ボロボロ泣きながら話す俺の言葉を、モロは静かに聞いてくれた。
それだけで、何となく心が落ち着いてきて。
安井「……ごめん。こんな話して。」
諸星「だからぁ、言ってんじゃん!
俺、こうやって謙ちゃんの恋愛相談聞きたかったんだって!
むしろもっと話して!俺のために!笑」
あぁ、俺なんていい仲間を持ったんだろ。
そう思った。
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作者名:綺羅 | 作成日時:2017年6月1日 23時