お姉ちゃんは家族、なんだぞ。【新村コウ】【霜月ユキナリ】

かさぶたぶたぶ ページ11

『僕はかさぶた 君の膝小僧 擦りむいたトコから 生まれた
今日の放課後 ケンカした君の 泣き声に呼ばれた


初めまして 仲良くやろうぜ かゆいからって 剥がすなよ
短い間だと 思うけど ここは 任せとけ


かさぶたぶたぶ かさぶた


体操座り ちゃぷちゃぷお風呂 僕だけお湯には 濡れないぜ
だけど濡れたよ 涙の雨だよ まだ膝が痛いのかい


仲直りがしたいんだね でも恥ずかしくて 出来ないの
大丈夫だよ 傷は治るんだ きっと もとどおり


謝るんだね すごくえらいぜ あのこも 話したかったハズ
ねぇ 気付いてる? 少しずつ僕が 小さくなってる事


ほらこっち来たよ 勇気を出せよ 最後には 握手するんだぜ
だから言ったろ 傷は治るよって もとどおりになるって


さよならだよ 仲良くやれよ 僕の事は 気にするな
初めて君の 笑う顔が見れた それだけでもう
シアワセだよ 生まれた場所が この膝小僧で 良かった
僕に会いたくなったからって わざと 怪我するなよ


かさぶたぶたぶ かさぶた


僕はかさぶた また会える日が 待ち遠しいけれど 本当は
二度と会わずに 済むのが一番 怪我には 気を付けてほしいな
でも たまには 転んでもほしいな』





俺、新村コウは彼女が歌っていた曲が何となく気になり、自室に戻った後コンピュータでその曲を調べていた。

動画サイトで曲を聴きながら、歌詞を調べた。
なるほど確かにこの曲は「深イイ」と言えるような曲で、どことなく暖かいような気持ちになる。


彼女がどういう気持ちでこれを歌っているのかは分からない。

だが、この曲を聴いた時、俺の脳裏に浮かんだのはおばあちゃんだった。
優しくて、俺のことをいつも考えてくれていたおばあちゃん。

思い出して、涙が出そうになった両目を慌てて擦る。


…もしかしたら、彼女も両親のことを思い出していたのかもしれない。

ユキナリから、Aとユキナリが血の繋がっていないことは聞いていた。

ある日突然霜月家にやってきた彼女。
その理由が、両親を亡くしたからだと想像することに難くなかった。


「…かさーぶたーぶたーぶ、かさぶーた」


1人きりの自室でポツリと歌って、自嘲する。


「はっ…下手くそだな」




この曲のかさぶたは、日が経つにつれ無くなっていったが。
俺たちの心に負った傷はかさぶたになっても、それが取れて消えることは一生無いのだろう。


そして、ふとした瞬間に剥がれて、涙を流すのだ。

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