STORY 31 ページ31
そう言い切ったマーロンの顔からはこれまでの子供らしさがすっかり抜け落ちていた。
「父は母が殺されて以来精神を病んでしまいました。まだかろうじて僕のことは分かりますが、仕事が手につかずクビになりました。せめて父を助けようとしましたがどこも人手が足りているうえに子供に出来る仕事はないと言われました。父はもう僕のことも分からなくなってしまいました。僕にはもう何も出来ません。あなたを呪う以外は」
マシューは黙って聞いている。その目は完全に魔女を見る物へと変わっていた。
「僕を断罪してください。それくらい出来るでしょう。僕を盾にして母の剣を防いだあなたになら。僕のことを何とも思ってないなら」
「……覚えていたのか。全部」
呟いた直後、マシューは立ち上がってマーロンの胸倉を掴むとベッドへ押し倒した。
「記憶喪失のふりなんかしやがって。何も知らねぇ馬鹿のままなら可愛げがあったのによ。このクソガキが」
「ずっと家に閉じこもってたから尾行したなんて嘘。全部夢で見たんだ。マシューが牢で女の子を襲ったのも。その子がジョンを殺して逃げたのも」
「あ? じゃあどこに逃げた。教えろよ」
「それは嫌。だって可哀想だし。ねえそれより、『マーロン、嘘だと言ってくれ。お前が魔女なんて!』っていうのはもう言わないの?」
「うるさい」
「病気なんだよね? 知ってるよ。僕がやったから。母さんを殺されたの、恨んでるから。だから呪ったんだ。近いうちに死ねって」
「うるさいっ!」
マーロンは左頬に鈍い痛みが走るのを感じると同時に初めてマシューに打たれたことを知る。
特に何も考えずにマシューを押しのけて起き上がると彼はあっけなくベッドから落ちる。
「うるせぇんだよ……! お前、なんかなぁ……」
言いかけるが発作に襲われ、彼は床に片手をついて咳き込みだした。
「うっ……く……」
苦しそうに胸を押さえてベッドに這い上がると体制を崩す。
マーロンは座ったままただそれを見つめていたが中央に横たわるマシューの隣までベッドの上を移動し、彼の呼吸が落ち着いたのを確認するとこう切り出した。
「お父さんね、死んじゃった」
「……だから、どうした……?」
「ここに居る。そうしたら好きな時に殺せるでしょ? それとも魔女として裁判受けたほうがいいかな」
「……俺の手で殺したいからここに居ろ」
嘲るような冷たい口調で言い放った後、片手で顔を覆う。彼は泣いていた。
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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます!はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです!マシュー、……あ、愛してる…って言いました……? (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます!好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田無苑珠 | 作成日時:2017年5月5日 13時