STORY 21 ページ21
それだけ言うと彼は牢を出て鍵を閉め、「そうだ」と思い出したように声を発する。
「イヴェル・ロヴィーナという男を知っているか？」
「知らない。どんな人？」
「囚人の間で広まっていた怪異の一つだよ。銀髪で枯れ木みたいに痩せてて吸血鬼みたいに青白い顔して、見ていたら魂吸い取られそうなくらいだ。おまけに俺がガキの頃に会った時と全然変わってねぇ。あれは絶対悪魔憑きだな」
「その人、この町にいるの？」
「処刑される前、女がここで見たと言っていた。俺はもう会いたくねぇけどな。あいつが側にいるだけで身体が凍りつきそうだ。ああ駄目だ、こういう場所で話すと出てくるのを忘れてた。思えば初めてあいつに会ったのも牢の側だったよ」
せいぜい魂吸い取られないよう気をつけな、とジョンがからかうように笑いながら踵を返して去って行くとロザリアは毛布を頭まで被る。何にしても彼女はまだ子供だ。怖くないわけがなかった。
ロザリアの入っている牢は階段を降りて奥の方にあり、上から聞こえてくる会話もほとんど聞こえない。それさえもぱたりと止んでしまうと不気味な静けさが残る。目を凝らして見れば薄暗い牢の隅から何かが手を伸ばしてくるのではないか、そんな考えが頭をよぎり、彼女は階段のほうに顔を向けた。ひび割れた壁の中で上からもれる明かりだけが救いだった。
「ロザリア」
「何？」
返答はない。訝しんだその数秒後、彼女は硬直する。声はすぐ横で聞こえた。自分は今、一体『何』に話しかけられたのだろうか。
僅かに毛布をめくると……長い銀髪が一房見えた。髪の位置からするとおそらくこちらを覗き込んでいる。ぞっとした。
「イヴェル・ロヴィーナ……？」
声が震えるがそれにも返答はなく、ロザリアは一層身を縮こませる。
「ねえ、怖いからせめて何か喋ってよ。どうやって入ってきたの？ 通り抜けたの？」
「あの男が入った時からずっと居た。開けっ放しにしてただろう？」
呆れたような声にロザリアは安堵の息をついた。口を利いてくれたおかげで少しは恐怖がおさまり、毛布を頭から外して思い切って右を向くと膝をついた男が僅かに首を傾げた状態で見下ろしていた。それほど痩せすぎてはいないものの、影のような黒い服からのぞく骨ばった手といい落ちくぼんだ虚ろな目といいどこか骸骨を思わせる風貌をしている。
幽霊ではないのか。そう思っておそるおそる彼の手に触れてみると氷のように冷たかった。
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田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» ただでさえ無実の女性を平気で殺しまくってる人ですからね。どこかもう自分でもどうしようもできないほど壊れてるんです。 (2017年6月5日 20時) (
レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 田無苑珠さん» もう色々とアレな人になっちゃってますねミスター・マシュー (2017年6月5日 20時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - 寝夢さん» 読んでくれてありがとうございます！はい、言いましたw……と、言っても実は恋愛という意味ではなくて、本人もよく分からない感情をマーロンに抱いてるんです。 (2017年6月5日 20時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 面白いです！マシュー、……あ、愛してる…って言いました……？ (2017年6月5日 10時) (レス) id: 0c9f17ee4b (このIDを非表示/違反報告)
田無苑珠(プロフ) - ロイヤルストリートさん» ありがとうございます！好きになってくれて嬉しいです (2017年5月23日 13時) (レス) id: f9f63da005 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：田無苑珠 | 作成日時：2017年5月5日 13時
